Wednesday, June 8, 2011

06/06 編集手帳


 今から10万年前は、最後の氷河期が訪れる前の間氷期と言われ、人類はマンモスなどと共に生活していた。では、10万年後の世界はどうなのか◆フィンランドでは、原子力発電所の高レベル放射性廃棄物を格納する地下500メートルの最終処分施設の建設が進められている。放射能レベルが十分低下するまで維持できるよう設計され、耐用年数は10万年とされる。公開中のドキュメンタリー映画「100、000年後の安全」でも紹介されている◆処分場の記録は公文書館に残すが、10万年後の人類に解読できるだろうか。考古学者が発掘しないよう、絵の標識で警告するといい。いやその頃には、氷河に覆われているのでは……。そんなことを科学者らが、真剣に論じていた◆日本の場合、特殊なガラスで固めて、30~50年にわたり専用施設で冷却した後、深さ300メートル以上の安定した地層に処分することになっている。安全性は十分に確保できるとされている。しかし、処分候補地はいまだ決まっていない◆10万年後の世界は人知を超えるが、後始末は済ませておかなければならない。それが「文明」と言うものだろう。
(2011年6月6日01時27分  読売新聞)

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