Wednesday, June 8, 2011

04/06 よみうり寸評


 歴史学者の秦郁彦氏が近著「病気の日本近代史」(文芸春秋刊)で、世界保健機関(WHO)を批判している◆やり玉に挙げているのは、WHOが世界の音頭を取ってきた「たばこ規制」や昨年から推進に乗り出した「アルコール規制」だ。秦氏は「人間の伝統的渇望」に対する差別ではないか、迫害ではないかと書く◆「たばこ」への渇望はもはや旗色が悪いが、アルコールも、となると異論は多かろう。それでも規制を求めるWHOは「強力な政治団体」と手厳しい◆秦氏は著書でWHOの次の標的も予測している。まずは携帯電話の電磁波。さらに香水、肉類、肥満、自動車などが続いている◆3番手が電磁波なのは、秦氏によれば、ブルントラント元事務局長が電磁波に過敏な体質だったからだ。予想が当たったか。WHOが今週、携帯電話には脳腫瘍のリスクがあると発表した。「限定的な危険性」というが、1年前は「リスクなし」と言っていた◆日本人はほぼ全員が持つ携帯だ。あいまいな安全評価は困る。
(2011年6月4日14時15分  読売新聞)

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