Tuesday, April 19, 2011

19/04 余録:悲しいランドセルの春

 <あなたはちいさい肩に/はじめて/何か、を背負う/机に向かってひらく教科書/それは級友全部と同じ持ちもの/なかには/同じことが書かれているけれど/読み上げる声の千差万別>。石垣りんさんの詩「ランドセル」は続ける▲<入学のその翌日から/ほんの少しずつ/あなたたちのランドセルの重みは/違ってくるのだ/手を貸すことの出来ない/その重み/かわいい一年生よ。>--成長と共に子供たちそれぞれの重みを蓄えていくランドセルだ。常ならば、それが喜びに跳ねる春である▲だがこの春はいったい何度泥にまみれたランドセルに胸を詰まらせればいいのか。児童多数が津波にのまれた宮城県の小学校近くに積まれた色とりどりのランドセルの写真は正視できなかった。テレビ報道でがれきの中から見つかるランドセルの名札も涙ににじんだ▲その被災地の悲しみも癒えないというのに、18日朝は栃木県鹿沼市の国道脇に土に汚れたランドセルがいくつも積まれた光景に胸を突かれることになった。こちらはまごうことなき人災、小学校4~6年生の6人の列にクレーン車が突っ込み、児童全員が亡くなった▲多くの子供を連れ去った災害の非情に打ちひしがれていたところで、今度は人の不注意がもたらした子供たちの理不尽な死である。「なぜ」と、事故を起こした運転者をことさら厳しく問い詰めたくなるのは人情だ。天に生かされる命を実感する今だからこそ悔しい▲ランドセル一つ一つに蓄えられていく子供らそれぞれの未来だ。それを奪い去るあらゆるまがまがしい力から子供を守らねばならない。改めてそう誓いたい。

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