2011年3月30日20時3分
東京電力の福島第一原子力発電所の事故の対応で、各国から支援の申し出が相次いでいる。オバマ米大統領は「今回の教訓から学ばなくてはいけない」と表明。「フクシマ」は、世界の心配を集める問題に発展している。
「原発内で遠隔操作できるロボットを日本に送る」
米エネルギー省のライヨンズ次官補代行(原子力担当)は29日の上院エネルギー天然資源委員会で、そう証言した。AP通信によると、同省の原子力研究所(アイダホ州)から、原発内を撮影できるカメラ数台とともに日本に向けて発送されたという。
ロボットは強い放射線の中でも作業が可能だ。ライヨンズ氏は「日本政府関係者が非常に強い関心を示したため、情報を提供した」と説明。ロボット操作の指導役として、同省の専門家を日本に派遣する方針も示した。
ライヨンズ氏は「現時点の情報では、原発は事故からの復旧作業が遅れているように見える」と指摘。エネルギー省から40人の専門家を派遣するとともに、作業に必要な機材約7トンも日本に送るなど、全力で支援する姿勢だ。
米空軍も、日本政府の要請で観測機WC135を派遣。大気中のごく微量の放射性物質を検知できるセンサーを備えており、2006年と09年の北朝鮮による核実験の際も出動した。
世界有数の原発大国フランスからはサルコジ大統領が31日に来日し、菅直人首相と会談して原発事故対応に全面的に協力する意向を表明する方向だ。ベッソン仏産業相は28日、「東京電力から、放射性物質に汚染された水の処理の専門家を見つけてほしいとの要請を受けた」と述べた。東京電力は、福島第一原発で使用している混合酸化物(MOX)燃料を加工した仏エネルギー大手のアレバやフランス電力公社(EDF)にも支援を要請。アレバのロベルジョン最高経営責任者(CEO)が来日したほか、専門家5人も日本に派遣された。
中国は、建設機器大手の三一重工(湖南省長沙市)が、高さ62メートルから放水できる生コン圧送機を東京電力に寄付し、28日に福島県に到着した。高層ビルの建設現場で生コンを流し込む機械だが、冷却のための放水に転用する。ベトナムの企業が所有する生コン圧送機も、長さ約58メートルのアームを伸ばして放水に利用。ドイツで製造され、ベトナムの建設会社「ソンダー・ベトドク」に納入するために船便で運ぶ途中、たまたま横浜港にあったために、日本側が協力を要請。ソンダー社が使用を快諾した。
核兵器が広がることを防止しながら原子力平和利用をすすめる「核の番人」、国際原子力機関(IAEA)も、放射線計測の専門家チーム(2グループ計7人)を派遣するなど支援態勢をとった。
韓国政府は、12年にソウルで開く第2回核保安サミットで、原子力関連施設の安全管理問題を扱うかどうかの検討を始めた。韓国政府関係者によれば、今月あった同政府のサミット準備委員会で「福島第一原発の事故によって原発の安全性を懸念する声が世界的に高まっている」との指摘が出たという。
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菅政権は、核大国で同盟国の米国と連携を強化して、対応にあたる方針だ。
菅首相は30日、オバマ米大統領と電話会談。引き続き緊密な協力を続けることを再確認した。
日米両政府は、政府高官や原子力専門家、軍関係者らによる「福島第一原子力発電所事故の対応に関する日米協議」を22日に発足。日本側は内閣官房安全保障・危機管理室(安危室)が事務局となり、福山哲郎官房副長官と細野豪志首相補佐官が統括役として参加。東京電力関係者も加わっている。米側からは国防総省やエネルギー省、原子力規制委員会(NRC)、米軍関係者らが入っている。
この日米協議には三つのプロジェクトチーム(PT)が設置された。(1)原子炉の冷却、流出する放射性物質の拡散防止(2)核燃料棒や使用済み核燃料の最終処理方法の検討(3)廃炉に向けた作業検討、などを主なテーマに据えている。1~3号機から漏れているとされる高濃度放射線に汚染された水の排出方法についても議論している。
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