Wednesday, March 30, 2011

29/03 福島原発事故 全世界が注視する日本の対処(3月29日付・読売社説)

 福島第一原子力発電所の事故は、日本だけの問題ではない。その対処の仕方に、世界の原子力平和利用の行方がかかっていると言えよう。

 巨大地震と大津波という天災が直接的な原因とはいえ、安全性で世界最高水準と評された日本の原発が無残な姿をさらしている。

 原子力は温室効果ガスを出さないクリーンエネルギーとして見直され、世界各地で原発の新規建設が活発化していた。「原子力ルネサンス」と呼ばれるその動きに、今回の事故は冷水を浴びせた。

 欧州連合(EU)は域内すべての原発について、耐震性能などの安全点検を行うことを決めた。

 原発17基が稼働するドイツは、1980年以前に建設した7基を3か月間の運転停止とした。

 メルケル独政権は、前政権の「脱原発」政策を転換し、既存の原発の稼働期間を延長する政策を掲げていたが、その方針を再び転換する可能性も出てきた。27日の地方選挙では、「反原発」の世論を背景に環境政党が躍進した。

 欧米諸国では、79年の米スリーマイル島、86年の旧ソ連・チェルノブイリの両原発事故でも原発の安全性へ不安が広がり、新規建設の停滞を余儀なくされた。

 だが、エネルギー安全保障や地球温暖化対策の観点からも、原発は安全に管理する限り、電力供給で重要な位置を占め続けよう。

 世界では、約30か国で原発が稼働中だ。建設中または計画中の国も含めれば四十数か国に上る。

 世界最多の原発を保有する米国では、今回の事故で、新規建設凍結を求める声が議会から出た。しかし、オバマ大統領は、事故から「教訓を学ぶ」とし、原発建設推進の方針堅持を表明している。

 米国の次に原発の多いフランスは、新規建設も、他国への原発売り込みも続ける方針だ。韓国も原発推進の姿勢を変えていない。

 中国、インドなどの新興国を含む多くの国は、増大する自国のエネルギー需要を原発なしに満たすことができないのが実情だ。

 原発の安全性を確立することが国際社会にとって急務である。

 福島第一原発からの放射性物質の放出が長期に及べば、深刻な国際問題になりかねない。

 日本は情報を各国と共有し、世界中の核専門家の協力を仰いで、迅速に事故を収拾しなければならない。それが、世界の原発推進国の信頼を保つ唯一の道である。

(2011年3月29日01時27分 読売新聞)

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