(7月6日付・読売社説)
定期検査で停止している原子力発電所の運転再開に向けて、局面を打開する動きが出てきた。
九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)の2、3号機について、玄海町の岸本英雄町長が運転の再開を了承した。
佐賀県の古川康知事も、運転を容認する構えだ。8日の県民説明会や、11日の県議会の論議を踏まえて判断するという。
政府の指示で、九州電力は地震や津波による電源喪失など、過酷事故への安全対策を実施した。その上で、海江田経済産業相が原発の運転再開に「国が責任を持つ」と確約し、突破口が開けた。
県議会などには、依然として慎重論も根強い。古川知事が、最終的に判断する前に「首相の真意を確認したい」とし、首相に会談を求めたのは当然だろう。
首相は早急に現地を訪問し、安全性や運転再開の必要性について自ら丁寧に説明するべきだ。
首相は、中部電力浜岡原発の全面停止を唐突に求め、原発の安全性に対する懸念を増幅させた張本人だ。説得の先頭に立ち、事態を改善させる責任がある。
東京電力の福島第一原発事故は収束になお時間がかかる。原発が立地する他の自治体では、運転再開に難色を示すところが多い。
玄海原発の再開を実現させて、「次」につなげることが重要である。他の原発でも、地元の自治体から同意を得るための追い風となるだろう。
今夏は東京電力や東北電力の管内はもちろん、全国的に電力不足が深刻になりそうだ。
九州電力では需要に対する供給の余力が、猛暑時に2%を切る見通しとなった。関西電力は、原発2基が7月下旬に検査入りすることから、一時的に供給力が需要に届かなくなるとして、節電の要請に踏み切った。
このままでは1年以内に国内の全原発54基が停止し、電力供給の3割が失われる恐れがある。電力が足りず、大幅な減産や工場の海外移転が加速しかねない。
日本経済の衰退を防ぐには、原子力の安全を確保し、原発を活用することが欠かせない。
首相は、太陽光や風力など自然エネルギーの普及促進を図る再生可能エネルギー特別措置法案の早期成立に意欲を示している。
自然エネルギーの普及は重要だが、水力を除けば電力量の1%に過ぎず、直ちに主要な電力源にはならない。政府は、原子力と火力を柱とした現実的なエネルギー政策を推進すべきだ。
(2011年7月6日01時25分 読売新聞)
No comments:
Post a Comment