7月6日付
「粗にして野だが卑ではない」は第5代の国鉄総裁、石田礼助氏の言葉である。総裁に就任して初めて国会に出たとき、自己紹介で語った。のちに城山三郎さんが、石田氏の生涯を描いた評伝の表題にそのまま用いている◆「粗」はあらく、こまやかでないこと、「野」は単純で洗練されていないこと、「卑」は言うまでもない。小欄流のおおざっぱな解釈をするならば、「粗」と「野」は品行の問題であり、「卑」は品性の問題になろう◆主人が奉公人をいびるように、あるいは古参兵が新兵をいじめるように、被災県の知事に向けて連発したその人の放言には「卑」の臭気が充満していて、映像を見るたびに胸が悪くなる◆相手が誰でも、こういう言葉遣いをする大人になってはいけませんよ…という教訓を世の子供たちに残し、松本龍復興相が就任から9日目で引責辞任した◆菅政権はどこまで堕 ちていくのだろう。お粗末な人選という「粗」と、延命の野心という「野」はすでに持ち合わせている首相である。例によって、任命責任には頬かむりを決め込むつもりだろうか。粗にして野にして「卑」でもある。
(2011年7月6日01時25分 読売新聞)
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