無情というほかない。
東日本大震災からまだひと月もたたない。人々が喪失と向き合い、生活を取り戻すために動きだそうというときである。深夜の東北地方を、最大震度6強の揺れが襲った。
震源は宮城県沖でマグニチュード(M)7.1。それだけでもめったにない大地震だが、M9だった3月11日の本震の余震だという。
M9の地震後、少なくとも半年はM7級の余震を覚悟する必要があるという専門家の指摘もある。まだまだ気をやすめることができない状態が続く。
こうしたなかで、なによりも気を配るべきは、被災地の人々が二重、三重の被害に遭わないようにすることだ。
余震がきたとき、仙台市内の体育館では、照明が音を立てて揺れ「落ちてきそうで怖かった」と感じる住民がいたという。被災者がどれほど揺れにおびえているかがわかる。避難所の安全策にまず心を用いたい。
被災地では、復興に向けたさまざまな作業が始まっている。これらの仕事も、大きな余震が今後も起こる可能性を織り込みながら進めてほしい。
一方、最も気がかりなのは原子力発電所である。
この余震で、東北電力の東通原発では外部電源が切れて、非常用発電機を動かすことになった。女川原発でも一部の外部電源しか使えなくなった。福島第一原発の事故のきっかけが電源喪失だったことを思い返すと、背筋が寒くなる。
外部電源がこれほどもろいなら、非常用発電機がすぐ働くかどうかを改めて確かめ、それもだめなときは電源車を使うという多重の態勢を万全にする必要がある。
「福島第一」の失敗を、絶対に再現してはならない。
東北地方の原発は、本震や余震で何度も揺すられてきた。弱くなっているところがないか心配だ。点検を急ぐべきだ。
3月11日の本震のように海底のプレート(岩板)境界で起こる巨大地震は、余震の域を超えた大地震も伴うことがある。
たとえば、1944年の東南海地震の2年後には南海地震が起こっている。1854年には安政東海地震の翌日に安政南海地震が続いた。双子地震と呼ばれる。
さらに、プレート境界の大きな動きが影響して、内陸の活断層が刺激されることもある。
日本列島は今、地震リスクが高いとみるべきだろう。東北だけでなく全国で、地震への備えを強めたい。
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