東日本大震災や福島第一原発事故で、避難所暮らしを強いられている子どもたちの学校教育の立て直しを急ぎたい。先生や友だちと触れ合える穏やかな日常こそ深手を負った心を癒やしてくれる。
被災地では教育現場が壊滅的な状況に追いやられ、新学期がいつ迎えられるのかほとんどめどが立っていない。避難所に使われ、被災者が暮らす学校は多い。校舎や体育館が傾いたり、水没したりといった被害は枚挙に暇(いとま)がない。
教科書や文房具、ランドセルやかばんも流失した。大切な家族や友だち、先生を亡くした子どもたちもたくさんいる。それでも、悲しんだり、悔やんだりしてばかりはいられない。
三月下旬、宮城県名取市で市立小中学校がいったん再開されたときの光景には心が和んだ。家屋や車などのがれきの山がまだ残る中で、久しぶりに再会した子どもたちは「生きてて良かった」と抱き合って喜んだ。
学校が生み出す子どもたちの大きな笑顔が、深く傷ついた心の癒やしにつながり、周りのみんなの生きる糧となる。阪神大震災から学んだ貴重な教訓だと、兵庫県教育委員会の担当者は言う。
学びの場の再開に向けて着実に準備を進めたい。避難所の一角に教室をしつらえたり、校庭や公園に教室を仮設したりする。大事なのは、学校生活と避難所生活とをはっきりと切り分けて大震災前の日常を取り戻すことだという。
文部科学省は「子どもの学び支援ポータルサイト」を設けている。先生や専門スタッフなどの人材派遣や、学用品や図書、玩具などの物品提供、被災地の子どもの受け入れなどの情報が分かる。学校の立て直しに活用してほしい。
広島県教委は百六十人ほどの小学校一校を、熊本県人吉市は六十人ほどの中学校一校をそれぞれ丸ごと受け入れるという。子どもたちのホームステイを引き受ける自治体やNPO法人も出てきた。
学校が再開しても子どもたちの心のケアは欠かせない。住み慣れた故郷や家族と離れ、不安を募らせる子どもたちも多いはずだ。心身の不調を訴えたり、怖がったりするかもしれない。先生は小さな変化を見落とさず、きめ細かく向き合う必要がある。
スクールカウンセラーや養護の先生を充実させるべきだ。心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの深刻な症状があれば、スムーズに専門家につなげる仕組みも確かめておきたい。
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