Monday, April 4, 2011

02/04 「文化」は「復興」するか

2011年4月2日0時14分

 プロセス・イノベーション(工程革新)もプロダクト・イノベーション(製品革新)も、日々仕事を考えることで成り立つ。また課題の発見に比べれば、課題を克服することのほうがより容易であるともいえる。

 しかし、それは経済合理性を基礎とする企業の話である。廃虚となった地域社会の場合はどうだろう。全ての建物や機能が新しくなった「まち」にかつての「文化」あるいは「匂い」といったものが「復興」するだろうか。

 5年前に没した都市論の泰斗ジェイン・ジェイコブズは活力のある「まち」の四つの条件を示した。(1)幾つかの機能をもっている(オフィスや住宅あるいは商業に限定しない)(2)ブロックが短く街角を曲がる機会が頻繁である(3)新しい建物と古い建物が混ざっている(4)密度が高い。

 1970年前後に建設されたニュータウンの多くが空洞化しているのはこの条件の欠落による。阪神大震災にあった神戸市の場合も、高層マンションと大きな道路を中心に整然と「再開発」した地域で、どうみてもかつての「魅力」を取り戻しているとはいえない。

 たくさんの「まち」が流されてしまった今回の災害からの「復興」の難しさは、技術や資金にあるのではない。どうしたら地域の「文化」を「復興」させることができるかにある。

 問われているのは構想力である。それは廃虚からの「復興」の事例を徹底して集めることから始まる。神戸や西宮の経験のなかから「なにをすべきではなかったか」を学ぶことはとても大事だ。

 危険なのは「整然とした合理性」の誘惑である。個性をつくるには時間がかかる。(遠雷)

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 「経済気象台」は、第一線で活躍している経済人、学者など社外筆者の執筆によるものです。

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