福島第一原子力発電所の事故に対する国際社会の支援がいよいよ本格的に動き出した。主要国首脳会議(G8)の議長国であるフランスのサルコジ大統領も来日した。
海外でも第一原発からとみられる放射性物質が検出され始めた。現場では、原子炉の制御を回復する作業を大量の汚染水が阻み、海水にも高濃度の放射性物質が漏れ出ている。
日本はこの危機に対処できていないのではないか、という不信感も生まれている。支援の機運が高まるのは、各国に危機感があるからだ。
事故の対応は長期戦の様相にある。政府や東京電力が受け入れに踏み出したのは当然だ。諸外国の知恵を借り、その好意を成果に結びつけたい。
軸になるのは、原子力のノウハウを蓄積している米国の協力だ。専門家による助言に加え、放射能汚染に対応できる米軍の専門部隊も派遣される。
とりわけ期待したいのが、危険な現場にいる作業員の仕事を肩代わりする技術だ。米国からの機材には、原発内で遠隔操作できるロボットが含まれる。
欧州の原発大国フランスからは大量の防護服や防護マスク、測定器が届き、汚染水処理の専門家も来日した。英国やドイツからも専門家派遣などの申し入れが届いている。
国際原子力機関(IAEA)も、住民避難とのからみで第一原発周辺の放射性物質の詳しい調査を政府に促している。
国際社会が敏感に反応する背景には、1986年の旧ソ連チェルノブイリ原発事故がある。
当時、事故炉から出た放射性物質が欧州の広い地域に飛び散って、「地球被曝(ひばく)」とさえいわれた。その経験から、原発災害には一国では立ち向かえない、という認識が培われてきたのである。
今回は、国際社会が連携して原発の一大事に臨む最初の例となろう。
大事なことは、国外の支援を国内の人材や機材、ノウハウとうまく組み合わせることだ。
炉を落ち着かせ、放射性物質の放出を抑えるには何が求められ、どの国の技術や人材が最適かを見極める。場合によっては「こんなところに力を貸して」と要望してもいい。
外務省や東京電力はばらばらに対応するのではなく、首相官邸が司令塔となって専門家の意見を聴きながら判断することが大切だ。
国際社会の不信を解消するために的確な情報を発信することにも積極的でありたい。
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