「本格的な造りの甘酒を飲んでみませんか」。マスターが杯を出した。飲んべえの私だが、砂糖の甘みが強い甘酒はどうも苦手。マスターはなおも勧める。「甘酒には2種類あるんです。酒かすを溶いて砂糖を加えるのと、米と米こうじで造るのと。これは長野県の酒蔵が、米と米こうじでしっかり造った自信作です」
京都市左京区、鴨川のそばで居酒屋を営む伊東昭黄士( しょうじ )さん(59)は「日本酒学講師」(日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会認定)の肩書を持つ。伊東さんいわく「日本酒の案内人」。試験では酒の知識だけでなく、話術やプレゼン能力も問われ、全国でも143人(15日現在)しかいない。
「日本酒は本来のおいしさを知ってもらえないまま、誤解されている」。そんな不満を持つ伊東さんは、日本酒が苦手な人には、あえて勧めたくなるという。店で日本酒に開眼したお客さんも多い。
勧められた甘酒は、ふくよかでしっかりと米の味がした。「どうです。全然違うでしょう」。思わずお代わりをお願いした私に、日本酒学講師は「してやったり」の笑顔を見せた。【駒崎秀樹】
毎日新聞 2011年6月16日 大阪夕刊
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