Tuesday, July 12, 2011

12/07 憂楽帳:司法と福祉

 「正月に遊びに行っていい?」。年の瀬、離れて住む父に電話すると「来なくていい」と怒鳴られた。元日の夜。男(38)はやり場のない感情を抱えて河川敷をさまよい、高架下に標的を見つけた。以前と同じように。

 路上生活者を鉄パイプで殴り3人を殺傷した罪で起訴された男は、法廷で動機を聞かれ「八つ当たっちゃったんです」と言った。医師の鑑定結果は自閉症で、専門的なケアを受ける機会を逸していた。自分の言動が理解されずストレスをためこんだ時、解消するすべを知らず、より立場の弱い者にはけ口を求めるようになっていた。

 無期懲役の求刑に対し、東京地裁立川支部は5月末、男に殺意はみられず責任能力も不十分だったとして、懲役12年の判決を言い渡した。そして最後に「可能な限り障害に留意した処遇を」と付け加えた。

 司法と福祉の連携不足が多くの被害者と加害者を生んできた。再犯防止には福祉の力が必要だという認識を示した判決が、互いの距離を縮めるきっかけになってほしい。【磯崎由美】

毎日新聞 2011年7月12日 12時50分

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