Tuesday, July 12, 2011

12/07 春秋



2011/7/12付
 原子力発電所の再稼働を巡って出てきた「ストレステスト」という言葉は聞き慣れた人もいるだろう。金融機関に経済の悪化に耐えられるだけの資本があるかどうかの審査もそう呼ばれる。もとは企業の品質管理で使われてきた言葉だ。
▼たとえば自動車は、車種によっては砂漠やジャングルも平気で走れるよう、部品が高温や強い衝撃に耐えられるかを試験する。電気自動車用の蓄電池は車ごと水につけても性能が落ちないかみるなど、過酷な耐久性試験の歴史がある。製品の品質を高め、日本のものづくりを支えてきたひとつがストレステストだ。
▼政府が決めた原発のテストも製造物の信頼性を調べる点は変わらない。が、きのうの枝野幸男官房長官の発表では、安全評価の基準が詰まっていないという。福島原発の事故から4カ月もたとうとしていたとき出てきたストレステストには唐突感が免れない。常に製品の改善を迫られている企業との落差は大きい。
▼企業経営では「方針管理」という言葉もある。どの製品に注力するかなどトップが方針を決め社内を動かすことをいう。いま政府のトップからは停止中の原発の再稼働について「方針」がみえない。組織が動くには進む方向を明確にする必要がある。政府の原発対応のようなことをしていれば企業は生き残れない。

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