チェルノブイリ原発事故の発生から26日で25年になる。広大な放射性物質の汚染地では苦難が続いている。福島第一原発でも重大事故が繰り返された今こそ、旧ソ連で起きた悲劇の教訓をしっかり生かしたい。
事故の被害はなお甚大だ。地元ウクライナでは、原発から半径30キロが居住禁止のままだ。
時間をおいてがんなどが発症する放射線被害の特徴から、事故が原因の死者を国際原子力機関(IAEA)は、今後の数も含めて4千人と推定する。だが専門家の間には、汚染地の広大さから数十万人の死者が出るとの見方もあるほどだ。
住民の移住や健康対策、経済への打撃などで、事故発生から30年間に受ける被害総額をウクライナは約15兆円、放射性降下物が大量に落ちた隣国のベラルーシは約19兆円と見積もっている。ベラルーシでは、国内総生産の実に5倍近い額だ。
事故炉に残る核燃料などを封じ込めてきたコンクリート製の「石棺」改築などにも、国際社会は2200億円を負担する。
日本では政府や産業界が「事故はソ連の炉だから」と違いを強調し、原発建設を積極的に推進してきた。今からでもチェルノブイリ事故の貴重な経験を学び取り、福島の事故対応にも反映させていくべきだ。
この節目にウクライナでは先日、原発の安全性をめぐる首脳級の国際会議が開かれた。潘基文(パン・ギムン)国連事務総長は福島の事故も受けて、原子力安全基準の徹底見直し、地震、津波等の自然災害やテロに対する核施設の保安強化などを訴えた。
原発を当面使い続けるうえで当然すぎる指摘だ。しかし、原発をめぐる世界の状況は四半世紀で大きく変化している。
チェルノブイリ事故では、共産党支配下での秘密主義や非効率な管理体制が重大な背景となった。いま原発は、共産党支配を維持する中国やベトナム、多くで強権的な長期支配の続く中東諸国に広がりつつある。こうした地域での原発の安全確保には、透明性や説明責任を担保する体制の確立が不可欠だ。
原発に対するサイバー攻撃の問題もある。核開発疑惑が指摘されるイランで、核関連施設に制御装置を混乱させる攻撃を受けた疑いが出たことで、脅威は現実化した。福島の事故の後で米政府などは、原発をはじめ産業・軍事面の重要施設が抱えるサイバー攻撃に対する脆弱(ぜいじゃく)性を警告し始めている。
国際社会は原発をめぐるこうした新たな事態にも、早急に取り組んでいく必要がある。
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