2011年3月28日3時1分
福島第一原発から20キロ圏内の福島県双葉町に残る住民に、避難するよう説得する町職員と自衛隊員ら=23日、陸上自衛隊第12旅団提供
福島第一原発の20キロ圏内には、1号機で水素爆発が起きた12日に避難指示が出され、警察庁は15日、「全員が避難を完了した」としていた。だが、朝日新聞が27日、20キロ圏内にかかる10市町村に確認したところ、7市町村が圏内に残留者がいると答え、少なくとも60人余がとどまっていることがわかった。
福島県警は、避難指示直後から第一原発の近くに立ち入れないよう主要道路に警察官を配置している。このため、市街地での残留者の大半は指示の段階からずっと圏内にとどまっているとみられる。一方、農村部には集落に通じる小道が多く、田村市や葛尾村などでは残留者が出入りしている形跡もあったという。
こうした状況のなか、各自治体は陸上自衛隊や地元消防に協力を依頼。安否の確認と避難の説得を続けている。
各自治体によると、残留者の多くは身内を介護している人や、酪農をしている人。「寝たきりの親は介護が必要で避難所生活に耐えられない」「餌をやらないと牛が死んでしまう」といった理由で避難を拒んでいる。
避難指示は「首相は市町村長と知事に対し、避難のための立ち退きや屋内退避の勧告、指示を行う」とした原子力災害対策特別措置法の条文に基づく。各自治体は「法的な強制力がないので、強く拒否されれば打つ手がない」と説明する。
圏内のほとんどの地域で、電気やガスなどのライフラインが止まっている。各自治体は、生存が確認できた世帯には食料を届けているが、最多の34人がいる南相馬市は「説得に応じて避難した人たちとの公平性を欠く」として、説得以外の対応はとっていない。ただ当面の食料があることは確認できているという。
県は「残留者の総数はつかんでいない」としている。26日には、富岡町で寝たきりの高齢者や重病人のいる3世帯5人が発見され、病院に搬送される人も出た。町内は電話がつながらなくなっており、この5人については、情報が寄せられるまで町が所在を確認できていなかった。こうした例からみて、なお未確認の残留者がいる可能性もある。
ただ、圏内の市町村の多くが役場機能を移転させていることもあって情報収集が難しい状況。自治体側からは、国の主導による確認や説得の作業を求める声が上がっている。(小林誠一)
No comments:
Post a Comment