Friday, July 8, 2011

08/07 経産相辞意―「内閣崩壊」の異常さ

 またひとり、大臣が辞意を口にした。これでは、学級崩壊ならぬ、内閣崩壊である。

 こんどは海江田万里経済産業相だ。きのうの国会で「いずれ時期が来たら責任をとらせていただく」と述べた。来月、原発事故の損害賠償の枠組みを定める法律の成立のめどがつくころを念頭に置いているようだ。

 松本龍復興担当相が就任9日で辞めたばかりだ。

 内閣が直面する2大課題は、震災対応と原子力政策である。その2人の看板大臣が相次いで退場していくことになるのは、政権にとって極めて異常かつ深刻な事態というほかない。

 海江田氏は先月、原発の「安全宣言」をし、佐賀県を訪れて「安全性は国が責任を持つ」と説明した。だから、玄海町長は原発の運転再開を認めた。

 東日本大震災のあと、停止中の全国の原発のなかで初めて、玄海原発が再稼働する可能性が生まれていた。

 ところが、菅直人首相が新たに安全性評価(ストレステスト)の実施を指示し、安全を再確認する姿勢に転じたため、玄海町長は容認を撤回した。

 海江田氏は、こうした地元の混乱の責任をとるという。

 あの事故のあと、早々と安全を宣言することに無理があった。海江田氏がもし、メンツをつぶされたことに腹を立てているなら、情けないの一言だ。

 だが、原発再稼働という喫緊の課題すら、閣内の意思疎通が欠けていた現実の方が驚きだ。

 責任は首相にある。安全宣言の前に海江田氏を押しとどめ、ストレステストを指示していれば、混乱は起こらなかった。

 もちろん宣言のあとでも、改めるのをためらうことはない。それにしても、まず内閣の考え方を整理してほしい。テストが再稼働の条件かどうかもはっきりしないのは、おかしい。

 政策を実現するために、ともに汗をかくチームをつくるのが政治の第一歩だ。首相はそれを軽視しすぎている。今回のテストもその一例といえる。

 せっかく良い方向性を示しても、進め方が下手でチームが壊れれば、政治は動かない。それは政権の終わりを意味する。

 首相は赤字国債の発行を認める法律や再生可能エネルギー特別措置法の成立などの「退陣3条件」を掲げている。いずれも必要だと私たちも考える。だから、速やかに3条件を満たすことを与野党に求めてきた。

 しかし、自壊していく内閣にやりきる力が残っているのか。ここまでくると、強く危惧せざるをえない。

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