Friday, July 8, 2011

08/07 「やらせメール」とは情けない

2011/7/8付

 九州電力の社員らが玄海原子力発電所2、3号機の再稼働をめぐる国主催の説明会に「やらせメール」を送っていた問題が明らかになった。社員らが一般市民を装い、再稼働を支持するメールを送っていた。

 説明会は玄海原発の再開について、賛否両面から佐賀県民の率直な意見を聴く場として企画された。当事者である電力会社の社員が身分を隠し、一方的な意見を送ったのは、説明会の公平性を踏みにじる。原子力利用の大原則である「民主的な意思決定」にも反する。

 福島第1原発の事故で国民は原発に不安を募らせている。原発関係者が謙虚に反省しなければならないこの時期に、九電の行為は情けない。

 やらせメールは、経済産業省の主催で6月26日に佐賀市で開いた説明会に送られた。その4日前、九電の原子力発電部門の社員が本社や子会社の複数の社員に「一国民の立場」から玄海原発の再開を支持する意見を送るように依頼したという。

 説明会が開かれた時点で、佐賀県玄海町長や県知事は再稼働について態度を保留していた。やらせメールが首長の判断に影響を与えた可能性もあった。九電が組織ぐるみで「見せかけの県民世論づくり」を意図していたのなら、許されない。

 真部利応社長は7日、「(社長を)続けるにしても長くはない」と辞任を示唆した。だが前日の記者会見で自身の関与について「ノーコメント」と繰り返し、「そんなに大きな問題ですか」と述べた。事の重大さの認識が希薄だったのではないか。

 電力会社は地域の電力供給をほぼ独占し、地域経済に強い影響力をもつ。そのおごりと甘えが今回の問題の背後になかったか。外部の専門家を交えて徹底した調査が必要だ。

 一方で、説明会の開き方にも問題があった。出席者は経産省が募った地元商工団体幹部や主婦ら7人に限られ、ケーブルテレビなどで公開された。本来なら、多数の市民が自由に意見を言える場とすべきだ。

 福島原発の事故の遠因には「原子力ムラ」と呼ばれる閉鎖的な体質があったとされる。これから原子力政策の進め方を冷静に議論するためにもまず、電力会社が閉鎖的な体質から脱却しなければならない。

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