菅直人首相が中部電力に浜岡原発を当面、全基停止させるよう求めた理由は、同原発が近い将来の発生が予測されている東海地震の想定震源域の真上に立地し、津波発生も予想されているためだ。
駿河湾から四国沖にかけては過去に90~150年間隔でM8級の巨大地震が起こってきた。直近では1944年に東海沖から紀伊半島沖を震源とする東南海地震、46年にその以西の南海地震が発生。この際駿河湾付近は震源とならず、70年代半ばに石橋克彦・東京大助手(現神戸大名誉教授)が、東海地震の切迫性を指摘。国は世界でも例のない予知観測体制を敷いてきた。
しかし近年、東南海、南海地震と連鎖発生する可能性が指摘されている。連動型だと東日本大震災のようにM9級も否定できない。
また、この地域で約400年前に発生した「慶長地震」について、古村孝志・東京大教授(地震学)らが昨年秋、国や電力会社が想定する仕組みと異なる可能性があると発表。陸地で揺れが小さいのに巨大津波を起こした特殊な地震で、従来の東海地震の想定は津波を過小評価している恐れがあるとした。
地震と原発を巡っては、大震災以前も「想定外」が続いてきた。07年3月の能登半島地震では北陸電力志賀原発で想定の2倍を超える揺れに見舞われた。同年7月の新潟県中越沖地震では、東京電力柏崎刈羽原発で原発の揺れで過去最高の2058ガル(ガルは加速度の単位)を記録し、設計上の想定(834ガル)を超えた。
大竹政和・東北大名誉教授(地震学)は「他の原発にもリスクはあるが、浜岡だけ飛び抜けて危険という根拠が説明されていない。政府の専門家ときちんと検討されていたのか示すべきだ」と話す。【八田浩輔、西川拓】
毎日新聞 2011年5月6日 21時00分(最終更新 5月7日 0時54分)
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