2011年3月23日11時41分
みずほ銀行の現金自動出入機(ATM)や本支店の窓口業務がようやく再開し始めた。1週間にわたったシステム障害で、預金者や取引企業の「みずほ離れ」の可能性もある。脆弱(ぜいじゃく)なシステムを放っておいた責任も問われる。
義援金集中?対応誤る
みずほ銀行によると、システム障害のきっかけは14日に起きた。東京都内のいくつかの支店で、それぞれ特定の口座に一斉に数多くのお金の振り込み依頼が寄せられたという。依頼通りに送金するシステムの処理能力を超え、不具合が起きたらしい。
どんな振り込みだったかについて、みずほ銀は明らかにしていないが、関係者は「義援金の申し出が集中したからではないか」という。ただ、義援金の振り込み依頼が殺到したのは、三菱東京UFJ銀行や三井住友銀行など他の大手銀行も同じだ。
ある大手行は東日本大震災後、義援金の振り込みに備え、普通の振り込みとは別に受け付けるようシステムを変えた。一つ一つ処理するのではなく、ある程度まとまってから相手方に振り込んだという。みずほ銀はこうした対応を取らなかった。システムの処理能力を高めることもできたが、やっていなかった。
西堀利(さとる)頭取も21日の記者会見で「システム上の手当てが十分でなかった人為的なミスだ」と、システム障害が「人災」だったことを認めた。
複数の支店で生じた不具合が全体に波及したことは、みずほ銀のシステムの基盤の弱さと言える。システムの構造的な問題について西堀頭取は「(混乱を大きくさせた)本当の要因だ」と認めており、改善しないまま放置していた責任が問われる。
「二度と取引せぬ」怒声も
「こんな銀行とは、二度と取引しない」。22日朝、みずほ銀行の支店を訪れた女性(64)は声を荒らげた。
東京・秋葉原で電気部品卸売業を営む。22日には商品を仕入れた代金として約30万円を振り込まなければならないが、口座には15日以降、売上金が入っていない。
「秋葉原の部品業界は不況だから、支払いが滞って信用に傷がつけば、倒産よ」
取引先に頼んで56万円を借りた。今回はこれで急場をしのぐが、落ち着いたら口座を他行に移すという。
みずほ銀の前身の旧富士銀行以来のつきあいになる男性経営者(78)も「メーンバンクを変えざるを得ないかもしれんよ」と話した。
預金者の怒りもおさまらない。36歳の主婦は、18日の予定だった夫の給与が振り込まれなかった。19日からの3連休で防災用の水や食料などを買おうと思ったが、できなかった。「来月から、給与振り込み口座は他に変えます」
みずほ銀の預金者らの口座は約2500万口座にのぼり、総額約55兆円を預かっている。東京商工リサーチによると、みずほ銀との取引がある企業は中堅・中小企業を中心に約13万社あり、このうち、みずほ銀がメーンバンクは約6万4千社にのぼる。
みずほ銀は3行統合の混乱で2002年に大規模なシステム障害を起こした。この時もみずほ銀を見限る預金者や企業が相次いだ。再び「みずほ離れ」のおそれがある。
◇
みずほ銀は23日のシステム復旧を見込むが、心配も残る。毎月、最も給与振り込みが多い25日を控えているからだ。例えば、先月25日は約190万件。今月18日に処理できなかった給与振り込み約62万件の3倍を超える。
みずほ銀は21日、他の大手行に対し、企業からみずほに代わって給与振り込みを求められた場合は実行してほしいと依頼した。全国銀行協会の奥正之会長(三井住友銀行頭取)も22日の記者会見で「(みずほ銀行に)処理が集中しないよう協力して欲しい」と、企業に呼びかけた。
大混乱を引き起こしたにもかかわらず、みずほ銀の西堀頭取は「トラブルを完全に解決することが頭取としての責任」などと経営責任について言及を避けてきた。ただ、25日を乗り切れば、復旧にめどがつく。金融庁も業務改善命令などの行政処分の検討を本格化する。責任をあいまいにした姿勢は許されなくなる。
全銀協は22日、西堀頭取が4月1日付で会長に就く人事を延期し、奥会長が6月まで続けると発表した。奥会長は「次は予定通りみずほ銀のトップ」としている。ただ、東日本大震災や原発事故で大変な時に、さらに迷惑をかけた銀行トップが辞任しないのでは、預金者や取引企業に納得されない可能性が高い。
◇
■みずほ銀行のシステム障害の経緯
14日 東京都内の複数の支店で、それぞれ特定の口座に大量のお金を振り込む依頼があった。システムに負荷がかかり、障害を起こす原因になった
15日早朝 システム障害が発生
午前 全店舗の窓口で振り込みが一時停止
夜 「すべてのシステムが復旧」と説明
16~17日 前夜の説明と違い、ATMなどを動かすシステムまでダウン。一時、全店舗の窓口で振り込みなどができなくなり、すべてのATMが止まる
17日午後 西堀利頭取が初めて記者会見し、状況を説明するとともに、預金者らに陳謝
18日 全店舗で振り込みができなくなり、すべてのATMが止まる
19~21日 3連休ですべてのATMが止まり、店舗窓口で1人10万円までの引き出ししかできず
22日朝 店舗内のATMで引き出しと預け入れを再開
昼 店舗やコンビニエンスストア内のATMで引き出し、預け入れ、振り込みが可能に。店舗の窓口で通常通りの営業をほぼ再開
みずほ銀行の現金自動出入機(ATM)や本支店の窓口業務がようやく再開し始めた。1週間にわたったシステム障害で、預金者や取引企業の「みずほ離れ」の可能性もある。脆弱(ぜいじゃく)なシステムを放っておいた責任も問われる。
義援金集中?対応誤る
みずほ銀行によると、システム障害のきっかけは14日に起きた。東京都内のいくつかの支店で、それぞれ特定の口座に一斉に数多くのお金の振り込み依頼が寄せられたという。依頼通りに送金するシステムの処理能力を超え、不具合が起きたらしい。
どんな振り込みだったかについて、みずほ銀は明らかにしていないが、関係者は「義援金の申し出が集中したからではないか」という。ただ、義援金の振り込み依頼が殺到したのは、三菱東京UFJ銀行や三井住友銀行など他の大手銀行も同じだ。
ある大手行は東日本大震災後、義援金の振り込みに備え、普通の振り込みとは別に受け付けるようシステムを変えた。一つ一つ処理するのではなく、ある程度まとまってから相手方に振り込んだという。みずほ銀はこうした対応を取らなかった。システムの処理能力を高めることもできたが、やっていなかった。
西堀利(さとる)頭取も21日の記者会見で「システム上の手当てが十分でなかった人為的なミスだ」と、システム障害が「人災」だったことを認めた。
複数の支店で生じた不具合が全体に波及したことは、みずほ銀のシステムの基盤の弱さと言える。システムの構造的な問題について西堀頭取は「(混乱を大きくさせた)本当の要因だ」と認めており、改善しないまま放置していた責任が問われる。
「二度と取引せぬ」怒声も
「こんな銀行とは、二度と取引しない」。22日朝、みずほ銀行の支店を訪れた女性(64)は声を荒らげた。
東京・秋葉原で電気部品卸売業を営む。22日には商品を仕入れた代金として約30万円を振り込まなければならないが、口座には15日以降、売上金が入っていない。
「秋葉原の部品業界は不況だから、支払いが滞って信用に傷がつけば、倒産よ」
取引先に頼んで56万円を借りた。今回はこれで急場をしのぐが、落ち着いたら口座を他行に移すという。
みずほ銀の前身の旧富士銀行以来のつきあいになる男性経営者(78)も「メーンバンクを変えざるを得ないかもしれんよ」と話した。
預金者の怒りもおさまらない。36歳の主婦は、18日の予定だった夫の給与が振り込まれなかった。19日からの3連休で防災用の水や食料などを買おうと思ったが、できなかった。「来月から、給与振り込み口座は他に変えます」
みずほ銀の預金者らの口座は約2500万口座にのぼり、総額約55兆円を預かっている。東京商工リサーチによると、みずほ銀との取引がある企業は中堅・中小企業を中心に約13万社あり、このうち、みずほ銀がメーンバンクは約6万4千社にのぼる。
みずほ銀は3行統合の混乱で2002年に大規模なシステム障害を起こした。この時もみずほ銀を見限る預金者や企業が相次いだ。再び「みずほ離れ」のおそれがある。
◇
みずほ銀は23日のシステム復旧を見込むが、心配も残る。毎月、最も給与振り込みが多い25日を控えているからだ。例えば、先月25日は約190万件。今月18日に処理できなかった給与振り込み約62万件の3倍を超える。
みずほ銀は21日、他の大手行に対し、企業からみずほに代わって給与振り込みを求められた場合は実行してほしいと依頼した。全国銀行協会の奥正之会長(三井住友銀行頭取)も22日の記者会見で「(みずほ銀行に)処理が集中しないよう協力して欲しい」と、企業に呼びかけた。
大混乱を引き起こしたにもかかわらず、みずほ銀の西堀頭取は「トラブルを完全に解決することが頭取としての責任」などと経営責任について言及を避けてきた。ただ、25日を乗り切れば、復旧にめどがつく。金融庁も業務改善命令などの行政処分の検討を本格化する。責任をあいまいにした姿勢は許されなくなる。
全銀協は22日、西堀頭取が4月1日付で会長に就く人事を延期し、奥会長が6月まで続けると発表した。奥会長は「次は予定通りみずほ銀のトップ」としている。ただ、東日本大震災や原発事故で大変な時に、さらに迷惑をかけた銀行トップが辞任しないのでは、預金者や取引企業に納得されない可能性が高い。
◇
■みずほ銀行のシステム障害の経緯
14日 東京都内の複数の支店で、それぞれ特定の口座に大量のお金を振り込む依頼があった。システムに負荷がかかり、障害を起こす原因になった
15日早朝 システム障害が発生
午前 全店舗の窓口で振り込みが一時停止
夜 「すべてのシステムが復旧」と説明
16~17日 前夜の説明と違い、ATMなどを動かすシステムまでダウン。一時、全店舗の窓口で振り込みなどができなくなり、すべてのATMが止まる
17日午後 西堀利頭取が初めて記者会見し、状況を説明するとともに、預金者らに陳謝
18日 全店舗で振り込みができなくなり、すべてのATMが止まる
19~21日 3連休ですべてのATMが止まり、店舗窓口で1人10万円までの引き出ししかできず
22日朝 店舗内のATMで引き出しと預け入れを再開
昼 店舗やコンビニエンスストア内のATMで引き出し、預け入れ、振り込みが可能に。店舗の窓口で通常通りの営業をほぼ再開
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