Monday, July 4, 2011

04/07 憂楽帳:写真に映る希望


 「福島の人々に希望と勇気を与える写真ですね」。水俣の海を撮り続けて16年になる写真家、尾崎たまきさん(40)が東京都内で開催している写真展「いまも水俣に生きる」では、来場者から少し予想外の感想が寄せられた。
 海藻の森を柔らかな太陽の光を浴びて回遊する魚の群れ、漁師の日常、水俣病の語り部だった故杉本栄子さんの笑顔--。尾崎さんのレンズは、水俣病で苦しんだ地域が回復した豊かな自然と、その恵みで生きる穏やかな日々を鮮やかに切り取った。昨秋に企画した写真展だが、「大震災の後に決めたのですか」「原発の問題が重なって見えます」と話す人もいたという。
 水俣病の公式確認は1956年。「魚(いお)わく海」といわれた水俣湾に、安全宣言が出たのは97年だった。原発事故と「重なって見える」のは、再び繰り返された重大な環境汚染への痛恨や、失った日常を取り戻す苦難と希望、なのかもしれない。
 写真展の情報は、ホームページ(http://www.ozakitamaki.com/)に掲載されている。【江口一】
毎日新聞 2011年7月4日 東京夕刊

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