Monday, July 4, 2011

04/07 憂楽帳:振り子の国

 今春、米国務省の招聘(しょうへい)プログラムに参加した際、ワシントンDCで中国の一行と一緒に講義を受ける機会があった。講師はジョージタウン大のムハレル・レオン博士。「米国の政治システム」のテーマで随所にQ&Aを交え、自由闊達(かったつ)な雰囲気の中で進んだ。

 民主主義の基本といった内容だが、軽快な語り口で飽きさせない。米国旗を燃やした男が無罪となった判例を基に「個人主義」や「表現の自由」を考えさせたかと思えば、メディアの重要性を論じたり。だが、中国の言論弾圧に及んだ途端、雰囲気は一変した。中国の通訳者が以降、一切の同時通訳を放棄したからだ。
 不穏な空気の中、博士は語り続けた。「寛容性が国を強くする。それは異なる意見にも耳を傾けるということだ」。通訳は訳すのを拒み続けた末、事態がのみ込めない自国の3人を引き連れて、時間きっかりに教室を後にした。
 滞在中、アジア情勢の専門家から聞いた「二つの中国」という言葉を思い出した。地域のリーダーとしてプラスの役割を担うのか、不安定要素となるのか。振り子のように揺れていて、まだ先行きは読めない。【鈴木美穂】
毎日新聞 2011年7月4日 西部夕刊

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