2011年4月22日0時31分
枝野幸男官房長官の21日午後4時の記者会見の内容は、次の通り。
【出荷制限の解除】
私から2点報告する。
まず、出荷制限の解除について。福島県相馬市及び新地町において産出された原乳、栃木県那須塩原市及び塩谷町において産出されたホウレンソウ、以上について本日原子力災害対策特別措置法第20条3項の規定に基づき、出荷制限を解除することとした。詳細は厚生労働省及び農林水産省におたずね下さい。
【夏の電力供給力上積み】
次に、本日東京電力から今年の夏に向けた供給力上積みの検討結果の報告があった件について報告する。先日4月15日、供給力のさらなる上積みを東京電力に検討するよう指示をしたが、これについて本日報告があった。私からは、報告のあった供給力が確実に確保できるよう最大限の努力をすること、そして被災地を多く抱え、なおかつ発電所が少なからず、東京電力は、東北地方あるいは東北電力管内にある。その東北電力への電力融通について最大限配慮することを求めた。
東京電力と東北電力管内の今夏の電力需給については、慎重に精査する必要があると考えている。近々、電力需給緊急対策本部を開催し、政府としての考え方をとりまとめたい。従って、精査前の段階でこの仮定の数字を示すことは差し控えたい。
【原発周辺地域の一時帰宅】
――20キロ圏内の一時立ち入りでは持ち出せるものは限られるが、持ち出せない財産は政府で補償するのか。
もちろん避難生活において持ち出せないことで受けている不便、それを補うためというのは当然補償の対象になりうるのはある意味当然だ。今回はまずは一巡、希望の方に一度戻ってもらうということで、一巡で終わることは想定をしていない。それぞれいろいろな要望があるし、午前中も言ったが、いろいろなオペレーションを積み重ねることで、安全性を確保したうえでの立ち入りについては、より改善の余地が十分あるのではないかと思う。従って、一回限りでないことをぜひ理解頂きたい。
【原発事故を受けた計画的避難地域の発表】
――福島を訪問した菅首相が佐藤県知事との話のなかで、計画的避難について明日発表すると言った。これは明日指示を出すのか、もう少し先なのか。緊急時避難準備区域も同様に実施されるのか。
総理が知事との話でそう言ったようなので、何とか明日までに具体的に最終整理をして発表したいということで鋭意最終の整理をしているところだ。内容については、できるだけ関連することについて具体的かつ広範に決めた上で発表できればと思っているが、それについては総理の福島県知事との会談の話を踏まえて今鋭意努力しているということだ。
【文部科学省のモニタリング結果】
――先ほど文部科学省が20キロ圏内のモニタリング数値を発表され、20キロ圏内でも一部では比較的数値が低い場所もある。ひとつの同心円でまとめてやることについて、数値の低い地域の住民は同心円でくくられることに疑問も出ると思うが。
ここはぜひ理解を頂きたい。また報道機関の皆さんも、ぜひ十分認識のうえ報道して頂きたいと思うが、今回の計画的避難区域については、1年間そこに住んでいた場合に蓄積された、累積された放射線量ということの安全性を配慮した。
20キロの所については、原子力発電所は現状では悪化している状況ではないが、必ずしもまだ安定している状況ではないので、事態が悪化する可能性、そのリスクに十分備えないとならない。その事態が悪化した場合に、住民の皆さんに影響を与えないようにするという観点から立ち入りを規制する。あるいは20キロ~30キロ圏のかなりの部分の所については、そうした場合にすぐに対応できるような準備を頂きたいということで緊急時避難準備区域の設定をしようとしている。
今、線量が低い高いということの基準ではなく、原子力発電所からの距離でその事態が悪化した時の風向きは今から予期できるわけではないので、これは基本的には同心円を軸にやらせてもらっていることで理解頂きたい。
【文部科学省のモニタリング結果その2】
――文科省の発表で、20キロ圏内の調査について今まで調査結果を公表してこなかった理由について、文科省は「官邸の指示だった」と説明しているが、官邸が止めていたのか。
少なくとも私は承知をしていない。20キロ圏内の調査については、しっかりと調査したデータを整理してまとめて発表するという報告は受けていた。その報告を受けていたのみだ。逆に言えば、今朝方だったか昨日の夜だったか、こういった形で発表しますというのが報告されて、これなら第一段階で早く出せばよかったのにと思ったが、指示をしたものではない。
――文科省へ官邸から指示は出ていないということか。
私が指示していないということは、私の決裁なくそういった指示が出ているとは一般的には考えにくいので、もしかしたらどこかで情報、意思疎通の齟齬(そご)があったのかもしれないとは思うが、重要なことなので確認したい。
【キャンプ・シュワブ工事】
――普天間基地の移設について、3月24日に米海兵隊が作成した沖縄の海兵隊の再編計画についての文書がある。この文書は、海兵隊が「誤ってネットに掲載してしまった」と、文書の存在自体は認めている。その中で「日本政府はキャンプ・シュワブで今年9月~10月にかけて擁壁の工事を開始する」と記載されている。日本政府から、米国政府にこうした工事計画の考え方を伝えた事実はあるのか。
当該報道については承知をしているが、現在は米国側でさまざまな検討中と理解している。米国側を含めて、何らかの決定がなされたという風には承知していない。従って、当該文書のなかに記述があったことについても、日本政府としてすでに決定して発表していること以外のことがあったとすれば、それはまさに日本政府の見解とか決定ではなくて何らかの推測ではないかなと思われる。文書自体は確認をしていないので、何とも申し上げようがない。何か決定していることがあれば報告している。
【原発作業員の被曝(ひばく)問題】
――原発作業員が突然被曝して造血機能を失った時のため、自身の幹細胞を事前に採取しておく方法について検討がなされたと思うが、今月4日、原子力安全委員会が不要だと言った一方で、福島第一原発の吉田昌郎所長はそういう手法があるなら作業員に事前に伝えておくべきだと見解を述べた。幹細胞の事前採取について、政府は要、不要をどう考えるか。
吉田所長の見解は直接承ってないので何とも申し上げようがない。安全委員会に議論頂き、そうした手法は一時的に大量の被曝をした場合、それに備えての措置としては効果的だと。
ただ原子力発電所の今回の事故の対応からすれば、累積による放射線被曝についての管理をしっかり行わなければならないというようなことはあるが、当該措置が必要なほどの大量の放射線を短期間で浴びるということの事故の対応とは違うということを踏まえ、一方、そうした対応をとるのには、採取に当たってのリスクなどもあるということで、むしろ今回は必要ないと、むしろ放射線の管理が重要であるということだと報告を受けている。ただ、現場で一番苦労されている吉田所長の考えについては、十分承らなければいけないと思っている。
【東電の賠償問題】
――東電の賠償問題で、電気料金の値上げはあるか。
まだ現段階でそういった具体的なことを申し上げる段階ではない。きちんと損害を受けられた皆さんに責任を持って補償する。補償にあたっては、法律に基づいて一定額まで国がいわゆる保険的な形で負担する部分に加えて東電の負担については東電がしっかりと全ての賠償を行うこと、それから首都圏に対する電力供給をしっかり継続して今後も行っていくことを確保するために国としての支援をしっかり行うことまでははっきりしているが、その上での具体的な基金の確保の手法などについてまだ、その段階まではいってない。
まずはできるだけ早く、特に避難をされている皆さんに対して仮払いにとどまらない補償をできるだけ早く、あるいは出荷規制などを受けられている皆さんへの補償をできるだけ早くということを優先して議論している。
【母乳から放射性物質】
――市民団体の調査で千葉と茨城の母親の母乳から放射性物資を検出したと。政府として調査や基準を設ける考えは。
母乳からそういう観測が出たことは承知している。その上で、厚労省などに改めて検討させたが、当然母乳に出るということは、食べ物、水の摂取に起因するわけだが、それについては、飲食物や環境などの測定もしっかり行われている。水道水も基準以下だが一時期高い時期あったが、その後問題ないレベルに下がっている。
ということを考えると、妊娠中、授乳中の方についても、そうした時期と思われる今回の調査でも、いわゆる水などの基準値を大きく下回っている状況なので、普段通りの生活行って頂いて、過度な心配なさらなくても大丈夫な状況であると判断しているが、とは言っても、お母様方にとっては心配だと思うので、私の方から、母乳についての念のための安全性チェックのために、一定の調査を行う必要があるのではないかと厚労省に指示したところだ。
――基準値を設けることにはならないのか。
今の段階、いま報告、発表されたものから考えて、しっかりとモニタリングを行えば、おそらくより下がった数値とか、出てこなくなるとか、想定される状況だと思っているが、しかし、心配だと思うので、念のため、しっかりと政府としても一定の調査を行おうと、そのことを確認しようという状況だ。
ぜひ妊娠中、授乳中の方のストレスもお子さんにとってよくないことなので、今回出ているとされる数値では問題ないという風に専門家の皆さんもおっしゃっているので、その上で、念には念を入れてモニタリングを行うよう指示したので、ぜひ安心して普段通りの生活を行って頂ければと思う。
【出荷制限のホウレンソウの流通】
――出荷制限がかかっていた千葉県産のホウレンソウが一部流通していたが、政府の説明の信用性にもかかわるが、どう考えるか。出荷農家が出荷制限を知らなかったと言っているが、出荷規制の改善点はあるか。
出荷制限については、関係者の皆さんがしっかり理解頂き順守するという前提で作られている仕組みだ。今回、理由については確認できていないが、出荷制限が指示されていたホウレンソウが宅配されたことは、消費者の信頼を損なう、結果的には出荷してしまった農業者にとどまらず、幅広く農業者の皆さん、関連の皆さんに迷惑かける行為で大変遺憾だ。
改めて関係者の皆さんに周知徹底するよう、農林(水産)省を通じてさせたいと思っている。また、せっかく作った農産物なので、農業者の皆さんにとってはつらいと思うが、全体としての流通に対する信頼性がないと、結果的には消費者の信頼を失うことになるということも含めて、十分な周知を図っていきたい。
【日豪首脳会談の遅れ】
――首相視察により、日豪首脳会談がずれ込んでいる。首相の視察は今日でなければいけなかったのか。
詳細な総理の当初の予定まで把握していないが、今日の行程の都合だったのかも知れない。もちろん他国から訪問された方との会談は重要だ。一方で、被災された、特に原発事故で着の身着のままで避難されている皆さんのつらい厳しい声というのを総理自身が直接承って、それを踏まえた上でしっかりとした対応していくことも重要だ。
どちらがどう重要か比べることはなかなかできないことだ。もし、いろいろな都合で到着が遅れているとすれば、大変残念だし、せっかく日本訪問されている豪首相には大変申し訳ないが、そこはそういった事情、経緯は理解頂けるのではないか。
――視察が今日だった意味はあるのか。
国会の日程もある。様々な日程の中で、もともと豪首相との日程が夕方だったので、逆に国会の日程などもないという中で、十分それに間に合うよう帰れるという想定で日程を組んだ。結果的に遅れているようだとすれば、そこはどういう事情で遅れているか確認できていないが、特にお客様に対しては申し訳ないと思う。
【警戒区域指定や避難指示解除の見通し】
――警戒区域もしくは避難指示解除の見通しはあるのか。
先程言った通り、放射線量が問題なのではなくて、原発の事態がもし悪化した場合に備えて、影響を受ける可能性のあるということで避難指示をしている。従って、文部科学省のモニタリングの結果が直接には関わらない。一時立ち入りなどにおいての安全性の確認とか、あるいはいずれ原発が収束した場合における事態、対応に備えてできる限りの調査をしておくという趣旨だ。
【原発周辺地域の一時帰宅その2】
――一時立ち入りできる代表者というのは、年齢とかの基準はあるのか。
もちろん子供とか妊娠中の方などは避けて頂くということは前提だ。例えば、そういった方だけの家族の場合にどうするかということについては、別に法律で決めるわけではないので、具体的に個別に相談させて頂いて対応させて頂くということになる。
――一時帰宅は、天候に左右されるのか。浴びる線量の制限はあるか。
天候については風向き、雨の時というのは、特に原発に近い所で放射性物質が大きく減ったとはいえ出ているので、基本的に避ける方針だと聞いている。その上での細かい具体的オペレーションは経済産業省原子力安全・保安院などにお尋ね頂ければと思う。
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