福島第一原発の耐震性を考慮する際、東京電力が地震を起こすことがないと認定していた断層が東日本大震災後に起きた地震で活動したことがわかった。経済産業省原子力安全・保安院や原子力安全委員会も東電の見解を追認していた。
2006年に制定された新耐震指針に基づき、地震を起こさないと認定された断層が活動したのは初めて。揺れは原発で想定した範囲に収まったものの、結果的に地震を起こす活断層を見落としたことになり、電力会社の調査や国の審査、指針のあり方が問われることになる。
活動が判明したのは、福島第一、第二原発の南40~50キロの福島県いわき市にある「湯ノ岳断層」。土木研究所や京都大チームの調査で、長さ約10キロにわたり地表の亀裂やずれが見つかった。4月11日夕方に震度6弱を観測した地震(マグニチュード7.0)で動いた可能性がある。
湯ノ岳断層は過去の研究で活断層とみられると判断されていたが、東電は改めて調査後、「12万~13万年前以降の活動はない」と認定した。新指針は、過去12万~13万年前以降に動いていない断層は、再び地震を起こさないとの考え方でつくられている。
保安院や安全委も昨年、福島第一原発の機器変更の申請に伴って活断層を再審査し、妥当と判断していた。活断層と認定しなかった根拠は、周囲の地形に地震による変形が生じていない、断層の境目が固結していることを挙げていた。
4月11日の地震では、東電が活断層と認定していた近くの井戸沢断層も活動した跡が見つかっている。いずれも、大震災の影響を受けた特殊な条件で動く断層だった可能性がある。新指針の線引きや活断層の認定方法が再検討を迫られることもありそうだ。
東電の福島第一、第二原発の揺れの想定は、より近くて規模も大きい双葉断層などの揺れをもとにしている。4月11日の地震の揺れは想定の10分の1程度におさまっている。(佐々木英輔、瀬川茂子)
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