経済産業省の原子力安全・保安院が、東京電力福島第一原子力発電所の事故の評価を、国際的な尺度(INES)で、これまでのレベル5から最も深刻な「7」へ引き上げた。
レベル7は、過去には、「史上最悪」と言われた1986年の旧ソ連チェルノブイリ原発事故しかない。福島原発事故の深刻さを反映したものだろう。
政府と東電は、事態収束に向けて一層力を注がねばならない。
評価尺度を決める基準となるのは、放射性物質の放出量や、原子炉の損傷程度などだ。
福島第一原発の場合は、政府が1~3号機の建屋爆発などで放出された放射性物質の総量を、周辺で観測された放射線量データを使って逆算した。その結果、チェルノブイリ事故に次ぐ規模の放出量と推計された。
79年の米スリーマイル島原発事故を、大幅に上回る量だった。
ただ、放出量自体は、チェルノブイリ原発事故の約10分の1にとどまっている。
チェルノブイリ原発では、爆発的な核反応が起きて原子炉が全壊し、火災も発生して約10日間、放射性物質が欧州などを中心に、広範囲かつ大量に飛散した。
福島第一原発では、核反応は地震直後に止まっている。原子炉の機能はほぼ維持され、核燃料も応急的な注水で冷却できている。放射性物質の空中への放出量も、建屋爆発当時に比べ減少した。
政府は、二つの事故の違いを丁寧に説明し、不安や風評被害が広がらないよう努めるべきだ。
福島第一原発では、原子炉の冷却機能を復旧させる作業が難航しており、依然、原子炉が壊れて大量放出が起きる可能性は残る。
だが、原子炉の温度などは安定している。最悪の状態は脱したとされ、今回のレベル引き上げは状況の悪化が理由ではない。
心配なのは、福島第一原発周辺で余震が活発化していることだ。震度5以上の揺れが、復旧作業をしばしば中断させる。地震で原子炉冷却の電源が50分間途絶え、ひやりとさせられたこともある。
当分、余震は続きそうだ。政府と東電には、冷却が止まらないよう万全の対策が求められる。
放射性物質の大量放出を踏まえると、汚染地域を把握し、住民の健康影響を最小限に抑えることもますます重要になる。政府の対応を急いでもらいたい。
(2011年4月13日01時00分 読売新聞)
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