Wednesday, June 29, 2011

29/06 春秋

2011/6/29付

 「不」という漢字は象形文字だという。花びらの付け根の萼(がく)をあらわす形なのだが、もとの語義を離れてもっぱら否定の意味に使われるようになった。不運、不幸、不能、不足などなど、この文字がくっつくと何だって打ち消しとなる。
▼一国の宰相である菅さんに、あまり「不」をたてまつるのはどうか。などと遠慮する時期はとっくに過ぎたようだ。辞めるといって辞めない、辞任の条件を挙げて開き直る、しかもこの期に及んで閣僚の入れ替えを強行し、自民党議員の一本釣りまで――。頭をよぎるのは不誠実、不埒(ふらち)といった険しい言葉なのだ。
▼きのうの民主党両院議員総会では、そんな首相への怒りが噴き出した。さっさと辞めてもらいたいが決め手はなく、身内のいらだちは募るばかりだろう。が、そういう人をかねて重職に据えてきたのだから、民主党そのものが問われること必定だ。なぜ菅さんという人がここまできたのか、不可解というほかない。
▼総会といえば、きのうは東京電力の株主総会も紛糾した。これほどの事故を起こしたあとの、かの経営陣のうつろなたたずまいだ。原発の安全神話を語ってきた組織と人の不徳を感じるのは気に病みすぎだろうか。どこを向いても「不」ばかりが目立つ震災後の世相。被災地の不撓(ふとう)不屈にだけ勇気をもらっている。

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