子供たちに学びの扉を開く春の新学期が始まる。だが東日本大震災被災地では学校が使えなくなったり、集団避難などで遠方に転校せざるを得ない子供たちが多く、そろって節目のスタートを切るのは難しい。
この厳しい現実を受け止めながら、これからの時代に対応する学校教育にどう結びつけていくか。日本の公教育制度の真価が問われよう。
広大な被災地では今なお行方不明者が多く、小中学校を所管する市町村教育委員会自体が被災するなどしているため、文部科学省も全体の状況をまだつかめていない。
毎日新聞の3月末時点のまとめでは、校舎被災で授業再開ができない小中高校は岩手、宮城、福島3県で少なくとも84校あり、児童生徒2万3700人程度の教室を確保しなければならない。
学校損壊は今後さらに増えるとみられるうえ、住民の県内外への避難状況もまだ全容不明なことから、新たな学びの場を必要としている子供たちはもっと多いはずだ。教科学習だけではない。心のケアが急務だ。
このため文科省は、全都道府県・政令市教委に通知を出し、支援の教職員派遣を求めている。被災地を除く43都道府県、17政令市教委が派遣可能と応じ、文科省は被災地の必要に合わせて調整する。
通知前に既に教職員を先行派遣して支援している県や、学校単位で子供を受け入れることを表明した県もあり、今後「オールジャパン」での支援機運盛り上がりが期待される。
だが、これは迅速な対応と、息長く柔軟な取り組みという二つが同時に求められる。被災県は文科省に、教職員を増やす加配の予算措置を求めているが、当然認めるべきだ。今回の未曽有の大災害には長期に子供たちを支える仕組みが必要だ。現職だけではなく、OBの経験、ボランティア学生らの熱意を生かすべく人材情報網もしっかり結びたい。
数百人規模ともみられる「震災遺児」について、文科省は全寮制の小中学校設立を構想している。里親制度などさまざまな対応策も勘案し、最適の道を求めたい。
子供も年齢や境遇で異なり、寄り添い方は一様ではない。まして家族が生死を分けたり、原発事故で遠く未知の土地へ集団避難を余儀なくされたりした不安は、大人以上に子供の内心にのしかかることがある。
特に幼い子は多くを語れない。教職員ら大人には愛情だけではなく、細心の観察と包容の力がいる。
学校の再開は、地域を元気づける。学校をコミュニティーの中心にして回ってきた地域もある。新学期のチャイムが復興へ歩み出す励ましとなることを願う。
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