強い横揺れで天井のパイプがずれ、大量の水が漏れてきた――。
東日本巨大地震が発生した11日、東京電力福島第一原子力発電所で、稼働中だった1号機棟内にいた男性作業員の証言から、建物内が激しく損壊した様子が初めて明らかになった。
この作業員は、同原発の整備などを請け負う会社に勤務。昨夏からたびたび同原発で作業しており、地震があった11日は、稼働していた1号機の建物内のうち、放射能汚染の恐れがなく防護服を着用する必要がないエリアで、同僚数人と電機関係の作業をしていた。
「立っていられないほどの強い揺れ。横向きに振り回されている感じだった」。地震発生の午後2時46分。上階で作業用クレーンや照明などの機器がガチャンガチャンと激しくぶつかり合う音も聞こえた。「これは普通じゃない揺れだと直感した」
建物内の電気が消え、非常灯に切り替わった。「その場を動かないように」という指示が聞こえたが、天井に敷設されていた金属製の配管の継ぎ目が激しい揺れでずれ、水が勢いよく流れてきた。「これはやばい水かもしれない。逃げよう」。誰かが言うのと同時に、同僚と出口がある1階に向けて階段を駆け降りた。
建物内で漏水を発見したら、手で触ったりせず必ず報告するのがルール。だが、この時は余震が続いており、放射能に汚染されているかもしれない水の怖さより、このまま原子炉といっしょに、ここに閉じこめられてしまうのでは、という恐怖の方が強かった。
1階は作業員でごった返していた。外に出るには、作業服を着替え、被曝(ひばく)量のチェックを受けなければならないが、測定する機器は一つだけ。細い廊下は長い行列ができていた。
激しい余震はその後もさらに続き、「早くしろ」とあちこちで怒声が上がった。被曝はしていなかったが、「水素爆発した後の1号機の建物の映像をテレビで見た。あそこに閉じ込められていたかもしれないと思うと今でも足がすくむ」。(影本菜穂子)
(2011年3月16日14時37分 読売新聞)
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