Sunday, August 7, 2011

26/07 よみうり寸評


7月26日付 

 中国浙江省温州で起きた高速鉄道の衝突、脱線、高架下への転落大惨事には驚いたが、その事故処理には二度びっくりで仰天した◆何と転落した先頭車両が砕かれ、脇に掘られた巨大な穴に埋められた。重機が運転席の計器類を壊していたとも報じられた◆一般に常識と思われる事故調査のイロハにことごとく反している。「落雷で設備が故障した」などというが、十分に検証する姿勢がない。現場保存や事故車両の精査などよりも復旧が優先なのか、一日半後には早くも開通させた◆この事故はヒヤリハットなどという段階ではない。その失敗から学ぶこともないままの運行再開に怖さを感じる。これが中国流というものか◆事故車両を穴に埋めたと聞いて〈焚書坑儒ふんしょこうじゅ〉を連想した。昔、秦の始皇帝は意に反する書物を焼き、儒者多数を生き埋めにした。現代の中国は国威の発揚を妨げる車両を穴に埋めて幕引きを急ぐのか◆事故車両はまた掘り出されたというが、〈坑儒〉ならぬ〈坑車〉とはあきれるばかり、理解に苦しむ。
(2011年7月26日13時52分  読売新聞)

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