Sunday, August 7, 2011

26/07 編集手帳


7月26日付 

 〈お隣もわが家もおなじ老夫婦一日おんなじテレビの音量〉。読売歌壇にあった。画面を見ていようがいまいが、テレビはいつもついている。お年寄り2人暮らしの情景だ◆もの悲しさを詠んだようでもあり、つつがなき暮らしの幸せを詠んだようでもあり、解釈はさまざまあろう。確かな点は、高齢者の日常生活にテレビは欠かせないということだ。それによって隣家同士、とりあえず変わりなし、と確認し合えるのかも知れない◆大震災の被害が大きかった3県を除き、テレビの地上波がデジタル化された。大多数の家庭は「地デジ化」したようだが、一方で高齢者世帯を中心に10万軒ほどが未対応と推測されている◆その家では、久しぶりの大相撲千秋楽を見られなかっただろう。いつもの「おんなじテレビの音量」が聞こえず、ご近所は心配しているかも知れない。総務省とテレビ各局は、今後も説明や支援を怠ることなかれ◆〈磯野家に地デジテレビはいつ届く〉。これは以前、大阪本社版に載ったよみうり時事川柳。速すぎる時代の変化に遅れていくサザエさん一家を案じながら、少しホッとしてもいる。
(2011年7月26日01時30分  読売新聞)

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