Thursday, June 9, 2011

03/06 天声人語

 男が得意げに言う。「来週会社を辞めてやると伝えたら、社長の奴(やつ)、がっかりしていた」。すると同僚が「今週じゃないからな」。クリント西森編著『ジョーク世界一』から引いた。同じ辞めるにも、重職ほどタイミングが肝心だ▼自民党などの内閣不信任案が賛成152、反対293で阻まれ、永田町のドタバタ劇はひとまず短編で収まった。震災対応にメドがついたら若い世代に引き継ぐ、という菅首相の「退陣予告」が効いたようだ▼ジョークとは逆に、辞めてくれるなら後日でもと、賛成予定の民主党議員が思いとどまったらしい。処分覚悟の欠席や賛成は、小沢元代表ら20人足らず。80人造反の票読みもあった中、政界、一寸先は闇である▼小沢氏は民主党の原点にこだわり、菅憎しに燃える。名うての壊し屋、今度も分裂辞さずの勢いだったが、腰砕けに終わった。造反者を追い出せば、首相は怪我(けが)の功名、衆院の安定多数を保ちつつ「脱小沢」が成就する▼与野党は、きちんと危機にあたれる人物を本気で吟味すべきだし、政党再編も一つの道だ。だがそれを国難の下でやるのは、土砂降りに打たれながら高級傘を探すに等しい。今はビニール傘でもというのが大方の声だろう▼国会で多数派工作が続く間にも、原発の汚染水はかさを増し、被災地では不便な一日が暮れた。議員は仕事に戻ろう。野党も政府の震災対応に協力するなり対案を出すなりし、一日も早くビニ……いや菅さんにメドなるものをつけさせたらいい。

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