東日本大震災で被災した福島第一原子力発電所について、米原子力規制委員会(NRC)がまとめた報告書が、原子炉内に注入した海水の塩が炉を厳しい状況に陥らせているという認識を示していることがわかった。東京電力は炉内の核燃料を冷やすため、緊急措置として近くの海から一時的に消防車のポンプで海水を注入していた。
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NRCの報告書(3月26日付)で強く示唆されているのが、海水を原子炉の核燃料の出す熱(崩壊熱)を冷やすのに使う弊害だ。
報告書では、1~3号機では、原子炉の圧力容器の底に、燃料が壊れてたまっていると分析。燃料は、一時注入していた海水に溶け込んでいた塩分が結晶化したものに覆われており、冷却水の流れが妨げられている、とみている。
注水ノズルも塩分で妨げられており、十分に機能していない可能性があるという。そのため、核燃料から出る熱をどれだけ冷やせているか、測るのが難しかったという。
さらに、1号機の圧力容器の温度は今でも200度以上の計測値を示し、なかなか下がらない。2、3号機よりも結晶化して核燃料を覆った塩分の量が多く、冷却をより難しくしていたと推定される。
その上、報告書によれば海水は真水(淡水)に比べて、核燃料の出す放射線の影響で水素ガスを発生させやすい。海水には酸素も含まれるため、水素と酸素がまじって、水素爆発する危険性も高まる。
報告書は海水注入が格納容器の中に「危機的な状況を作り出す」としている。そのため窒素の注入と、格納容器内から外部にベント(排気)をし、格納容器内の圧力を下げることを提案している。そうすれば「最大限の注水ができるようになる」という。
福島第一原発では3月11日の地震後に停電や非常用発電機が止まった影響で、1~3号機で、原子炉の核燃料を冷やす冷却機能を失った。
そのため、地震翌日以降、応急措置として消防車のポンプを使って近くの海から海水の注入が続けられていた。
ベントされれば周辺に格納容器内の放射性物質も放出されることになる。関係者にとっては避けたい措置だが、そうしてでも炉心を冷やす作業を続けざるを得ない状況にある。
通常は、原子炉内で純水に近い真水を循環させて冷却に使っている。海水を入れると、不純物や塩の影響で原子炉の配管や弁をつまらせたり、傷めたりすることにつながる。廃炉になる可能性が高まる。
だが、熱が発生し続けると核燃料が過熱して壊れたり、発生した蒸気の圧力で原子炉が壊れたりして、大量の放射性物質が漏れ出すおそれがある。海水は近くの海に豊富にあるため、塩分の害より冷却を優先した緊急避難的な決断だった。
海水注入は3月25日から26日にかけて次々に真水に切り替えられた。日本側は25日、真水を注入するのに使うため、米軍から真水を積み込んだ「バージ船(はしけ)」も借り受けている。
北沢俊美防衛相は「切り替えを早くすべきだと米側から強い要請があった」と25日の記者会見で明かしていた。
海水から真水への切り替えは、NRCの報告書がまとめられた時期に重なっており、背景にはこうした分析があったとみられる。
また、報告書では2、3号機の原子炉は、注水しているのに思ったより水位が上がらないため、圧力容器の一部が壊れて水が漏れている可能性も指摘した。
外側の格納容器に水があふれている場合、地震の余震が起きた場合に水の重さに耐えられず、壊れる可能性もあげている。
こうした大まかな見積もりは、NRCが日本原子力産業協会や経済産業省原子力安全・保安院などから得た情報をもとにまとめている。(香取啓介、ワシントン=勝田敏彦)
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NRCの報告書(3月26日付)で強く示唆されているのが、海水を原子炉の核燃料の出す熱(崩壊熱)を冷やすのに使う弊害だ。
報告書では、1~3号機では、原子炉の圧力容器の底に、燃料が壊れてたまっていると分析。燃料は、一時注入していた海水に溶け込んでいた塩分が結晶化したものに覆われており、冷却水の流れが妨げられている、とみている。
注水ノズルも塩分で妨げられており、十分に機能していない可能性があるという。そのため、核燃料から出る熱をどれだけ冷やせているか、測るのが難しかったという。
さらに、1号機の圧力容器の温度は今でも200度以上の計測値を示し、なかなか下がらない。2、3号機よりも結晶化して核燃料を覆った塩分の量が多く、冷却をより難しくしていたと推定される。
その上、報告書によれば海水は真水(淡水)に比べて、核燃料の出す放射線の影響で水素ガスを発生させやすい。海水には酸素も含まれるため、水素と酸素がまじって、水素爆発する危険性も高まる。
報告書は海水注入が格納容器の中に「危機的な状況を作り出す」としている。そのため窒素の注入と、格納容器内から外部にベント(排気)をし、格納容器内の圧力を下げることを提案している。そうすれば「最大限の注水ができるようになる」という。
福島第一原発では3月11日の地震後に停電や非常用発電機が止まった影響で、1~3号機で、原子炉の核燃料を冷やす冷却機能を失った。
そのため、地震翌日以降、応急措置として消防車のポンプを使って近くの海から海水の注入が続けられていた。
ベントされれば周辺に格納容器内の放射性物質も放出されることになる。関係者にとっては避けたい措置だが、そうしてでも炉心を冷やす作業を続けざるを得ない状況にある。
通常は、原子炉内で純水に近い真水を循環させて冷却に使っている。海水を入れると、不純物や塩の影響で原子炉の配管や弁をつまらせたり、傷めたりすることにつながる。廃炉になる可能性が高まる。
だが、熱が発生し続けると核燃料が過熱して壊れたり、発生した蒸気の圧力で原子炉が壊れたりして、大量の放射性物質が漏れ出すおそれがある。海水は近くの海に豊富にあるため、塩分の害より冷却を優先した緊急避難的な決断だった。
海水注入は3月25日から26日にかけて次々に真水に切り替えられた。日本側は25日、真水を注入するのに使うため、米軍から真水を積み込んだ「バージ船(はしけ)」も借り受けている。
北沢俊美防衛相は「切り替えを早くすべきだと米側から強い要請があった」と25日の記者会見で明かしていた。
海水から真水への切り替えは、NRCの報告書がまとめられた時期に重なっており、背景にはこうした分析があったとみられる。
また、報告書では2、3号機の原子炉は、注水しているのに思ったより水位が上がらないため、圧力容器の一部が壊れて水が漏れている可能性も指摘した。
外側の格納容器に水があふれている場合、地震の余震が起きた場合に水の重さに耐えられず、壊れる可能性もあげている。
こうした大まかな見積もりは、NRCが日本原子力産業協会や経済産業省原子力安全・保安院などから得た情報をもとにまとめている。(香取啓介、ワシントン=勝田敏彦)
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