与野党協議の結果、復興庁の司令塔としての役割が明確になったのは、高く評価できる。
復興庁設置法案が、民主、自民、公明3党による修正を経て衆院を通過した。今国会での成立が確実だ。
3党の修正協議の焦点は、復興庁の権限だった。
政府案は、復興庁の役割を政府の施策の総合調整や被災自治体の一元的窓口などに限定し、国直轄事業は国土交通など他省が行うとしていた。野党側は、復興庁を、国直轄事業も担う「スーパー官庁」とするよう主張した。
修正案では、国直轄事業は各省に残すことにした。復興庁には復興予算を一括して要求し、各省に配分する権限や、復興事業全体を統括・監理する権限を与えた。
これにより、他省に対する復興庁の立場は強化される。現実的で意味のある修正と言えよう。
閣僚などの増員については、閣僚1人と副大臣2人で決着した。防災相兼務の平野復興相が専任閣僚となるほか、副大臣が被災地に新設される三つの復興局の責任者を務める見通しだ。
民主党政権下の与野党協議は、野党案の丸のみを含め、民主党が野党に大幅に譲歩する例が目立っている。今回、野党の方が歩み寄ったのは妥当だった。
政府は来年3月の復興庁発足を目指している。組織の概要は固まったが、肝心なのは組織を動かす人材だ。各省から優秀な官僚を集めることが欠かせない。
復興庁設置法案と復興特区法案の成立によって、復興は立法段階から本格的な実施段階に入る。
東日本大震災から9か月近くになるが、政府の政策決定の遅さには被災自治体からも批判が多い。これまでの復旧・復興の遅れを取り戻すため、復興特区の認定や復興推進など3種類の計画の作成・認可の作業を急ぐ必要がある。
特に大切なのは、被災自治体が復興計画作りで直面する膨大な事務作業を、政府が積極的に支援することだ。各自治体では早くも、都市計画などの専門家や技術者の不足を懸念する声が出ている。
事務作業が滞り、肝心の復興が進まない――。そんな不幸な事態を避けるため、政府は、関係府省などから応援要員を各自治体に派遣し、計画作成作業を初期段階から後押しすべきだ。
(2011年12月7日01時20分 読売新聞)
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