アジアの工事現場で、日本のゼネコンが活躍する場面が目立っている。各国の経済成長に伴い、これまでなかった大型インフラ事業の受注に本腰を入れているためだ。ゼネコンの海外進出は、中東などで失敗した歴史もあるが、各社とも東日本大震災後に国内の工事が一服するのをにらみ、注力している。
マレーシアの首都クアラルンプール郊外の「パハン・セランゴール導水トンネル」の工事現場。マレーシア人やインドネシア人などに交じって、日本人が働いていた。清水建設と西松建設の社員約20人だ。
工事は2009年、清水建設など4社が落札、工事金額は約384億円。標高1千メートル級の山脈を貫き、1日189万立方メートルの生活用水や工業用水を首都に送る。全長44.6キロ。完成すれば東南アジアで最長だ。
各社の本格的な海外進出は06年ごろ、大手の鹿島、大成建設などが好景気だった中東・ドバイなどに進出した。各社とも、海外政府と直接契約を結んだ本格的な海外工事だった。
それまでは、各社のとった主な工事は政府の途上国援助(ODA)案件で、契約相手は日本人だった。
しかし、海外政府から請け負う「本物の」海外工事では、商慣習の違いから、工事代金が膨らんだ場合の追加代金をもらえないなどのトラブルが相次ぎ、損を出した。
河田さんも、インドネシアの水力発電の工事を担当したが、赤字だった。
だが、今回は契約前に100項目にわたるリスクを検証。追加工事があっても代金が取れるように、契約も万全を期す。あとは工期が遅れて違約金が発生しないよう細心の注意を払う。
国内の公共事業は将来的には減り続ける。各社は海外に市場を求めるしかない。「失敗は許されない」(河田さん)。トンネルは残り約20キロ、完成は14年の予定だ。(クアラルンプール=南日慶子)
■国内の建設投資、ピークの半分以下
日本国内の建設投資は2010年度は40.7兆円で、ピークの1992年の84兆円の半分以下。一方、アジアでは、この10年間で約8兆ドル(623兆円)のインフラ整備の需要があるという。
各社の進出にも熱が入る。清水建設は20年までに海外売り上げを全体の2割に引き上げる。大成建設は昨年12月、ベトナムの空港工事を受注。山内隆司社長は「将来的には海外受注は全体の半分」と話す。鹿島もシンガポールの発電所などを手がける。
ただ、海外にいけばもうかるという話でもない。中東・ドバイへの進出は今後の収益の柱と期待されたが、景気後退や商慣習の違いなどで、期待された成果は出せなかった。
海外勢との競争も激しくなっている。中国・韓国勢は人件費の安さを売りに受注額を伸ばしている。
国交省は昨年6月、国をあげてインフラ輸出を強化する方針を示した。契約の仕方などをバックアップする。国交省の担当者は「当面は震災の復興需要が見込めるが、いずれなくなる。余力のあるうちに、海外で収益をあげられるようにしないといけない」と話す。
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