Wednesday, November 9, 2011

09/11 オリンパス疑惑 日本企業の信頼を失墜させる(11月9日付・読売社説)

巨額の投資損失を隠蔽したうえに、企業買収を装ってモミ消しを図るとは言語道断である。

精密機器大手のオリンパスは8日、英国人社長の解任で表面化した不透明な企業買収について、実は1990年代からの投資損失を処理する偽装工作だったと発表した。

弁護士らによる同社の第三者委員会の調査で判明したという。長年にわたる“粉飾”によって、株主や取引先を欺き続けてきた罪は極めて重い。

オリンパスは内視鏡で世界トップという日本を代表する優良企業だ。一連の不正経理疑惑は、海外でも大きく報じられた。


オリンパス1社にとどまらず、日本企業全体の統治能力やコンプライアンス(法令順守)への信頼を失墜させかねない。

オリンパスは3年前、英医療機器会社を約2100億円で買収した際、約700億円の仲介手数料を投資助言会社に払う形にした。数%という手数料相場とかけ離れた、破格の報酬額だった。

資源リサイクル会社など国内3社の買収でも、700億円を超える買収額の4分の3をその後、損失として処理した。

こうした会計操作で捻出した資金によって、実態のない会社に付け替えていた投資損失を穴埋めしていたという。

オリンパスは買収額などが不自然だと指摘した英国人社長を10月中旬に解任し、買収は適切に行われたとの説明を繰り返していた。これは、会社ぐるみの背信行為というほかない。

すでに引責辞任している菊川剛前会長兼社長ら役員3人は、不正への関与を認めているという。8日、副社長は解任され、監査役も辞意を表明した。

証券取引等監視委員会は、粉飾決算の疑いもあるとみて、資金の流れや、他のオリンパス幹部の関与などについて、本格的な調査に乗り出した。疑惑の全容解明を急いでもらいたい。

お目付け役の監査法人が、きちんと責任を果たしてきたかどうかも、厳しく問わねばならない。

大王製紙でも、創業家出身の前会長が、グループ企業から100億円超の私的融資を受けた不祥事が発覚した。健全経営や情報開示といった社会的責任を果たそうとしない日本企業の国際的な信用が揺らいでいる。

企業経営者は、「社会常識」に反する「社内常識」がまかり通っていないか、謙虚な気持ちで点検してほしい。

(2011年11月9日01時04分 読売新聞)

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