震災からの復旧・復興財源を賄うため、公務員給与を2年余りで6千億円削る。そんな法案を政府が国会に提出している。
いずれ国民に復興増税を求めるのだから、身を削るのは避けられまい。
ただし、真っ先に身を削るべきは国会議員である。震災後の4月から月々の歳費を50万円減額してきたが、10月から満額の月129万円余に戻している。
自分たちは満額を受け取り、公務員給与は減らす。こんな理屈が通るはずがない。まずは議員歳費の減額を強く求める。
その次に、公務員給与をどれほど減らすのかという難しい問題がある。法案に沿えば、平均で7.8%減らすことになる。
ところが昨日、もう一つの削減案が示された。人事院が年間給与を0.23%減らすよう勧告したのだ。民間の動向を踏まえて勧告することを定めた法律に従って出してきた。
さて、法案通りに削るか、勧告に従うか。私たちは法案を成立させるべきだと考える。
勧告を採るだけでは、想定している復興財源が不足するからだ。さらに「官の身をろくに切らずに増税するのは許せない」と、国民が復興増税への反発を強めることも考えられる。
だが、法案成立のめどは立たない。6月に提出されたのに、まだ審議に入れない。
理由は「給与削減」と、公務員が制約を受けている労働基本権のうち「協約締結権」を回復する問題が密接に結びついているからだ。
基本権が制約されているため、人事院勧告に沿って給与などの労働条件を決めてきた。協約締結権を回復すれば、民間のように労使交渉で決められる。
だから連合系の労組は権利の回復を宿願としてきた。それがかなうならと、人事院勧告方式から踏み出して、削減法案をのんだ経緯がある。
なのに締結権回復の法案を先送りしたのでは、連合系との合意が崩れ、給与削減もおぼつかなくなる。政府は、両法案をあわせて成立させることを迫られている。
だが、国会では自民党などに、労組の立場が強まる締結権の回復に反対が根強い。
国会の外では、連合とほぼ拮抗(きっこう)する加入人員がいる全労連系が、勧告に基づかない賃下げは憲法違反だと主張している。
自民党と全労連の理解を、それぞれ得るのは容易ではない。だが、政府は誠意を尽くして打開策を探るしかない。
その出発点としても、国会議員の歳費削減が必要だ。
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