「8キロやせ、10キロ太りました」。3カ月ぶりに会うパレスチナ人大学院生、ファディ・クランさん(23)は血色も良くなっている。ヨルダン川西岸の同じ喫茶店で会った前回3月15日は、仲間とハンスト3日目。分裂していたパレスチナ指導部内の和解と民主化、イスラエルの占領終結を訴えるデモが、彼らの呼びかけで行われていた。和解は5月に実現し、世界が驚いた。
ファディさんは、留学した米スタンフォード大で物理学を専攻。在学中に発明した小型の風力発電装置で起業しようと昨年、帰郷した。研究者の招請や機械の輸入などが占領下で厳しく制限される壁にぶつかった。「変革する民主的な手続きや機関もない」
行動を始めた。西岸約80カ所での対話集会やウェブの交流サイトで、同胞の声を拾い、人をつなぐ。声は自治政府へ届けた。変化を感じるという。
風力で起業する努力も続く。実現すれば工場で生産や雇用が生まれ、起業の成功体験も、政治運動の先に見える「若者の夢になるはず」との信念だ。大きな力を生む風だ。【花岡洋二】
毎日新聞 2011年6月20日 東京夕刊
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