「思ったより長い」「発表は単なる目安なのでは」……。東京電力が福島第1原発事故収束までの「道筋」を示した17日の記者会見。既に原発周辺から避難したり、避難を指示される恐れのある「計画的避難区域」に住む住民たちは、事故から1カ月以上たって聞かされた日程に複雑な表情を見せた。不便な生活への怒り、将来の不安、そして東電への疑心暗鬼。さまざまな感情を抱きながら、発表を受け止めた。【河津啓介、和田武士、荻野公一、町田結子】
■双葉町住民
役場ごと埼玉県加須市に避難した双葉町の住民たち。両親と妻の4人で旧騎西高校に避難している配電線工事業、舘林孝男さん(56)は放射線量の大幅抑制までの期間について「自分では3カ月程度と思っていた。(6~9カ月は)長い」と憤る。福島県内で電気の復旧工事に携わることもできるが、高齢の両親を避難所に置いて行けない。「とにかく早く双葉に帰って働きたい。9カ月を目標にするのではなく、一日でも早く収束させてほしい」と訴えた。
父親と同校に避難した養蜂業、小川貴永(たかひさ)さん(40)は「暫定的な発表に過ぎないのでは」と疑う。知りたいのは帰れるめどだ。「人間が住めるまでどのくらいかかるのか、1次産業は復活できるのか。それを教えてほしい」と語気を強めた。
井戸川克隆・双葉町長は「町民のことを考えると、明確に安全な数値が確認されるまで帰宅できないと考える。さらにしっかりした作業をされることを望む」とコメントした。
■郡山市
福島県内最多の約1700人が避難する郡山市の多目的ホール「ビッグパレットふくしま」。避難指示が出ている半径20キロ圏内の富岡町や屋内退避が指示されている20~30キロ圏内の川内村の住民が中心だ。富岡町の斉藤義男さん(76)は「避難は一時的と思っていたが、そんなにかかるのか」と落胆の様子を見せたが、すぐ思い直したように「収束時期がはっきりすれば先の見通しも立つ。(見通しが)ないよりいい」と付け加えた。夫が原発関連の会社に勤めている富岡町の女性(52)は「政府や東電からいろんな発表があるが、言うことがころころ変わるように見える。今日の発表も信用できるのか」と手厳しい。
■飯舘村
全域が計画的避難区域になる飯舘村。菅野典雄村長は村役場のテレビで会見を見守った。「初めて先が見えたことは歓迎したい。だが、これで安心できるものではない」と感想を述べた。
事故は、村の基幹である農業、畜産業に大打撃を与えた。放射性物質の漏えいが抑えられたとしても、再建はその先だ。
「土壌の(除染などの)問題などはもっと日数がかかる。私たちにとっては、土地や牛も命の一つだ」とため息をついた。
■川俣町
一部が計画的避難区域になる川俣町の主婦、高木栄子さん(66)は「本当に6~9カ月で収まるとは信じられない」と疑問視した。事故後の生活上の悩みも訴える。「窓も開けられず、思うように外出もできない。ちょっとした家族の言動にもきつく当たるようになってしまった」
毎日新聞 2011年4月17日 22時04分
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