東京電力は17日、勝俣恒久会長が記者会見で福島第1原発1~4号機の収束工程表を発表し、原子炉内の水が100度以下で安定する「冷温停止」になるまで、最短でも6~9カ月かかるとの見通しを明らかにした。東電の発表を受けて海江田万里経済産業相が17日、会見した。避難区域の住民の帰宅可能時期について、「6カ月から9カ月後を目標に、一部の地域の人にお知らせできるようにしたい」と述べた。しかし、冷温停止後も汚染状態の分析などに時間が必要で、年内の帰宅は事実上、難しくなっている。
工程表で東電は、原子炉冷却や放射性物質の拡散防止など、63項目の具体策を示した。3カ月以内に「放射線量を着実に減少させる」、6~9カ月以内に「放射線量を大幅に抑える」とした。しかし、燃料取り出しや解体など、中長期的な見通しは示していない。
東電は今後3カ月を「ステップ1」、その後3~6カ月を「ステップ2」とし、(1)原子炉冷却(2)燃料プールの冷却(3)汚染水対策(4)大気・土壌での放射性物質抑制(5)避難地域での放射線量低減--の課題別に対策を公表した。
原子炉冷却では、ステップ1で原子炉圧力容器の外側の格納容器まで大量の水を注入して燃料の温度上昇を抑制。さらに炉内の水を循環させながら冷却するため、外部に熱交換器を設置することも検討する。1号機で行っている格納容器への窒素注入を2、3号機に拡大し、水素爆発の危険性を回避。格納容器が損傷しているとみられる2号機では、補修工事も行う。これらの対策をステップ2まで継続し、原子炉の冷温停止を目指すという。
燃料プールは、コンクリート圧送車での放水を続ける一方、プールを支える建屋の壁が損傷した4号機について、ステップ1で補強工事を行う。放射性物質の拡散抑制対策では、ステップ2までに原子炉建屋全体を覆う布製カバーの設置を終え、壊れた屋根や外壁をコンクリートなどで覆う本格的措置の詳細設計に入る。
ただ、現状では高い放射線に阻まれ、機器や配管の損傷程度すら正確に把握できていない。強い余震による作業の中断も予想される。勝俣会長は、スケジュール通り進むかどうか、不確定な要素も多いことを認めた。
海江田経産相は、一部地域の住民が帰宅可能かどうかを判断する時期について、「ステップ1では難しい。(原子炉が冷温停止状態になるなどの)ステップ2だ。ステップ2の終了時に内閣府原子力安全委員会の意見を聞いた上で、可能な限り広範囲の放射性物質の除去に取り組む」と述べた。しかし、「一部の地域」の範囲や、それ以外の地域については明言しなかった。また、政府として「原子力安全・保安院で、例えば1カ月間隔を目安に(進捗(しんちょく)状況を)確認していく」と語った。【平野光芳、藤野基文、関東晋慈】
■福島第1原発事故収束に向けた工程表■
ステップ1(放射線量が着実に減少傾向となっている)=3カ月程度
具体策
・圧力容器に窒素ガスを注入
・燃料上部まで格納容器を水で満たす
・汚染水の保管、処理施設の設置
・原子炉の熱交換機能の検討・実施
◇ステップ2(放射性物質の放出が管理され、放射線量が大幅に抑えられている)=ステップ1終了後3~6カ月程度
具体策
・使用済み核燃料プールへの注水の遠隔操作
・汚染水の処理、再利用
・原子炉建屋全体を覆うカバーの設置
・避難指示、計画的避難、緊急時避難準備区域などで除染
毎日新聞 2011年4月17日 20時32分(最終更新 4月17日 22時09分)
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