東日本大震災と福島第一原子力発電所事故を巡って、菅首相は指導力を発揮していない――そう見る人が、読売新聞社の震災後初の世論調査で約7割にのぼった。
国難とも言える震災への対策が遅々として進まない。首相はしっかり対処せよという国民の叱咤
しった
の声と受け止めるべきだろう。
福島第一原発の事故の対応について尋ねると、約6割が「評価しない」と回答した。事故処理に展望が見えず、放射能汚染が広がることに対する、不安といらだちの表れと見てよい。
福島第一原発については初期対応が後手に回り、危機の連鎖を招いた。首相官邸と東京電力、原子力安全・保安院の連絡や、連携にも難があった。
原発事故を巡る事実関係の公表の遅れなど、情報公開の在り方についても問題を残している。
司令塔である首相は、国民の声に謙虚に耳を傾けて、問題解決を急ぎ、不信や懸念の払拭に一層努めなければならない。
一方で、菅内閣の支持率は31%と、前回より7ポイントも上昇した。国民の信頼を失い、危険水域にまで達していた支持率の低下に、大震災が歯止めをかけた格好だ。
これは、未曽有の事態に直面して、首相の交代や衆院の解散・総選挙の余裕などなく、現内閣を頼みにするしかないという支持の広がりと見るべきだろう。
震災直後は、被災者へ生活物資が届かず、燃料不足も大きな問題になった。状況は改善しつつあるとはいえ、被災者は依然、苦しい生活を強いられている。避難所で亡くなる高齢者も少なくない。
政府には、被災者の救援、生活再建に向けて、一層きめ細かく対応してもらいたい。集まった多額の義援金も、早急に被災者に行き渡るようにする必要がある。
注目すべきは、民主党と自民党による連立政権を支持する声が、64%にものぼったことだ。
国家の非常時である。与野党が一致協力して震災対策に取り組めというのが、多くの国民の思いではないだろうか。野党側も、真摯
しんし
に応えなければなるまい。
復興に向けて、補正予算をはじめ、増税や特別立法制定など案件が山積みだ。円滑に処理していかなければならない。
菅首相は、大連立も視野に、安定した政権を構築して、迅速に震災対策に当たるべきである。
(2011年4月4日01時21分 読売新聞)
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