Friday, December 23, 2011

ウィニー判決が問う技術開発


2011/12/23付

 著作物の違法コピーに使われたファイル共有ソフト「ウィニー」を巡り、開発者を逆転無罪とした二審判決を最高裁が支持する判断を下した。ソフトを提供しただけでは著作権侵害のほう助にはならないとした。ソフト開発の自由度を認めた妥当な決定といえる。
 ウィニーはインターネットを使って音楽や映像などのファイルを共有する仕組み。「P2P(ピア・ツー・ピア)」技術と呼ばれ、利用者が匿名により直接、情報を交換できるのが特徴だ。
 一審は同ソフトが違法コピーに使われると知りつつ提供したのは著作権法違反ほう助になると判断した。だが二審はファイル共有ソフト自体は中立的な技術であり、それを提供しただけではほう助罪にはならないとし、最高裁も二審と同様に開発者を無罪とした。
 ウィニーを巡る論争は一応決着したものの、今回の裁判が日本のソフト開発者を萎縮させた面は否めない。自分が作成したソフトが第三者に悪用されると、自らも罰せられるとなれば、ソフト開発をためらうことになるからだ。
 6月の刑法改正で「ウイルス作成罪」が制定されたが、初めから悪意のあるソフトを作った場合とP2Pの技術開発は異なる。旧防衛庁などで情報流出が起きたのも、ウィニー自体の問題というより、情報共有の設定機能を改ざんするウイルスに原因があった。
 またP2P技術はうまく使えば新しいサービスになる。国際的なネット電話サービス「スカイプ」もこの技術をもとに開発している。日本はP2P分野で先行していたが、ウィニー問題で開発が止まってしまった面もある。
 一方でネットによる違法コピーも見逃せない。米国では「ナップスター」と呼ばれるファイル共有ソフトが問題となった。その反省から生まれた米アップルの音楽配信は大きな産業に成長した。
 日本でもソフトがネットで安く買えれば違法コピーは減る。今回の判決を機に新しい情報サービスが広がることを期待したい。

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