Sunday, September 25, 2011

25/09 首相国連演説―脱「内向き」の先頭に

 大震災と原発事故という未曽有の試練を抱えても、日本は決して「内向き」にはならない。世界の課題に貢献し続ける。

 野田首相が国連総会の演説に込めたのは、そんなメッセージに違いない。

 首相は冒頭、震災にまつわる三つのエピソードを紹介した。

 宮城県で研修中のインドネシア人看護師が、津波の直前に患者を避難させてくれたこと。

 ブラジルの恵まれない子どもたちが、小銭を集めて日本に送ってくれたこと。

 ケニアの大学生が追悼集会で「上を向いて歩こう」を合唱してくれたこと。

 そして首相は「世界との絆を日本人は永遠に忘れない」と誓った。

 戦後の日本は、先の大戦への反省から、平和国家をめざし、途上国の開発援助を積極的に展開してきた。

 今回、世界中から救いの手が差し伸べられたのは、半世紀以上にわたる日本の活動への評価と無縁ではなかろう。

 だからこそ、復旧・復興や原発事故の収束を急がねばならないなかでも、経済大国として持てる力を国際社会の課題に注ぎ続けるべきだと考える。

 首相は新たな国際公約として(1)南スーダンの国連平和維持活動への協力(2)ソマリアの飢饉(ききん)への人道支援(3)中東・北アフリカの民主化支援のための10億ドルの円借款を表明した。この内容を率直に評価する。こうした努力が日本の国際的な地歩をより確かなものにするはずだ。

 これに比べて、原子力安全に関するハイレベル会合での演説には大いに疑問がある。

 「事故の教訓を世界に発信する」と宣言したのはいい。しかし、今後のエネルギー政策を具体的に語ることもなく、原発輸出の継続を宣言した。訪米前に米国紙に、原発の再稼働時期を「来夏に向けて」と明言したことと合わせて、菅前首相の「脱原発依存」の後退を図っているようにしか見えない。

 菅氏が5月の国際会議で、自然エネルギーを拡大させる野心的な数値目標を示したのに比べて、何とも見劣りする。

 前政権の何を引き継ぎ、何を変えるのか。首相は明確に国民に説明する責任がある。

 国内では、復興増税や社会保障のための消費増税が議論されている。国連でアピールした対外支援についても、幅広い国民の理解と支持を得る作業が欠かせない。

 外交日程は一段落し、明日から国会の予算委が始まる。その論戦が最初の試金石になる。

No comments:

Post a Comment