Tuesday, June 28, 2011

28/06 天声人語 - いま1日に100種の生物が絶滅しているという

2011年6月28日(火)付

爬虫類(はちゅうるい)のイメージを擬態語で表せば、ヌルリ、ゾクリ、ヒヤリ、だろうか。蛇にせよ蜥蜴(とかげ)にせよ、てらてら光って冷たそうだ。だが意外と言うべきか、かつて栄えた恐竜は「人肌」の体温があったと、東京で読んだ紙面が伝えていた▼米独の研究チームが、草食恐竜ブラキオサウルスとカマラサウルスの体温は36~38度だったと発表した。もっとも、これまでは40度前後と推定されていたから、下方修正らしい。近年は鳥類の起源ともされる恐竜だが、素人には人肌との取り合わせが面白い▼ブラキオは推定で体長23メートル、体重が40トンあった。巨体の維持には大量の食物がいる。体温を人肌なみに抑えることでエネルギー消費を少なくしていた可能性もあるという。しかし、そんな「努力」も小惑星の衝突で無に帰したとされる▼約6500万年前に小惑星が地球にぶつかった。飛散した粉じんが太陽光を遮り、寒さと食料の欠乏で多くの生き物が絶滅した。巨体ほどもろかったというから、恐竜には受難だった▼時は巡り、いま1日に100種の生物が絶滅しているという。災いをもたらす「現代の小惑星」に人類は例えられる。なのに、去年は随分見聞きした「生物多様性」の一語は遠のいた印象だ。気がつけば小欄も、今年は一度も書いていない▼反省しつつ、生き物のにぎわう星を案じる。人為による生物の大量絶滅期に入ったとの警鐘は声高だ。環境の死は文明の死を招く。ジワリと迫る私たち自身の危機を、忘れてはいけない。

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