Tuesday, June 28, 2011

28/06 春秋

2011/6/28付

 頭の上に黒い電話機を乗せて現れる。シャボン玉で全身を包んだような服でピアノを弾き始める。奇抜とか派手とかいう前に、思わず愉快な気分になってしまう。大人気の米国の歌手、レディー・ガガさんが、復興支援のため来日した。
▼日本が好きなのだそうだ。震災の翌日、3月12日には「日本の為に祈りを」と記したリストバンドを売り出し、1億2千万円を寄付した。記者会見では、ティーカップにキスしてみせ、オークションにかけて収益を被災地に送ると語った。観光庁から感謝状を贈られたが、「本当はこんなものいらないの」と言う。
▼ポップス愛好家に限らず、見る人が自然にニコリとするのは、このアイドルの「突き抜け感」が心に響くからだろう。被災者の避難所暮らしには終わりが見えない。原発事故は心理的にずっしり重くのしかかる。何か常識外れのことをしたい、されたい、という気持ちを、日本の誰もがいま抱いているに違いない。
▼ガガさんはロックスターのデヴィッド・ボウイとクイーンを、自分の活動の手本にしたそうだ。演劇のような表現と、物語を感じさせる存在感。それらが「入り口」となって、観衆を日常生活から連れ出すからだと話している。人々が求めるものを感じ取るショービジネスの才能は、日本の政治家より勝っている。

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