Tuesday, December 20, 2011

震災の年に訪れる「クリスマス三連休」に悲鳴が続出? 寂しいシングル男女を憂鬱にさせる“絆”の同調圧力

【第21回】 2011年12月19日   崎智之 [プレスラボ/ライター] 

“絆”を深める大震災後のクリスマス
でもシングルにとっては「憂鬱な三連休」に?

今年もこの季節がやってきた。恋人たちが素敵なレストランでディナーを楽しみながらプレゼントを交換し、色とりどりのイルミネーションを眺めて愛を確かめ合うあのイベントが……。
そう、世に言う「クリスマス」である。クリスマスとは、「イエス=キリストの誕生を祝う祭り」(大辞泉)。しかし、日本においてはキリスト教の記念日であると同時に、カップルの祭典であることは、読者もご存知のとおりだろう。
しかも、今年のクリスマスは“スペシャル”だ。偶然にも24日と25日が土曜、日曜というカレンダーで、さらに23日も祝日のため、三連休となっている。カップルにとっては嬉しい限りだが、一方で悲痛な叫び声を上げているのが、恋人がいないシングルたちである。
周知のとおり、毎年恒例の「今年の漢字」に選ばれたのは「絆」。震災の影響もあり、恋人同士の繋がりを大切にする気運が高まっている。そんな風潮を受けて、恋人がいないクリスマスを例年よりも寂しく思う人が続出しているというのだ。
なかには、「恐怖のクリスマス三連休」と感じる人さえいる。2011年のクリスマスを巡る悲喜こもごもを追った。
まずは、クリスマスにまつわるデータから見ていこう。
靴下を製造・販売するタビオの調査によると、クリスマスを「恋人と過ごす」と解答した20代の男性は84.0%で、昨年対比20ポイントも増加。女性も76.0%で8ポイント上昇した。
一方、前回も指摘した通り、国立社会保障・人口問題研究所の「出生動向基本調査」では、交際相手がいない男性は61.4%、女性は49.5%に上り、1987年以来、最高水準となった(18歳~34歳)。
さらに、そのなかで「とくに異性との交際を望んでいない」と回答した男性は27.6%、女性は22.6%もいて、「嫌交際」ムードが広がっている。そんななか突如として訪れた「クリスマス三連休問題」を、世のシングル男女たちはどう捉えているのだろうか。

イルミネーションを見るだけでブルー!
連休だから友達を誘うのも気が引ける

 「街のクリスマスイルミネーションを見るたびにブルーになりますよね。『節電』や『自粛』はどこに行ったのだろうと、意地悪な気持ちが湧いてきてしまうくらいです。もちろん、経済の活性化のために盛り上がってもらうのは良いことだと思いますが、恋人がいない身にとっては、今年のクリスマスは例年より厳しいものになりそうです」(30代男性)
大震災をはじめ、様々な出来事が起こった2011年だからこそ、「絆」を確かめ合いたいカップルは多い。しかし、恋人がいないシングルの心中は穏やかでないのだ。さらに、こんな証言もある。
 「カレンダーを見て、クリスマスが3連休だと知ったときは絶望しました。クリスマスとクリスマスイブに1人で外出すると負けた気分になりますので、23日のうちに映画をたくさんレンタルして、家に籠もろうかと思っています」(30代男性)
 「今年の漢字は『絆』だそうですが、僕にとってはその言葉が拷問のように感じます。恋人がいる会社の同僚のなかには、張り切って三連休の予定を考えている人もいました。彼女がいない僕にとっては『魔の三連休』になりそうです」(20代男性)
厳しい状況は、女性にとっても同じだ。
webサイト「オルニチン研究会」の調査によると、彼氏がいない独身女性の45.5%がクリスマスにストレスを感じているという。さらに、20~24歳の85.4%は「クリスマス(イヴ)はデートしたい」と答えており、女性にとっていかにクリスマスが重要なイベントであるかがうかがえる。
 「今年のクリスマスは本当に辛いですね。震災直後も心細かったですが、彼氏がいないクリスマスがこんなに寂しいと思ったのは初めてかもしれません。結婚している友達が『せっかくの三連休だから、23日と24日は少しリッチに外食して、25日は家で手料理を振る舞う』と計画を立てていたのを見て、心底うらやましいと思ってしまいました」(30代女性)
ある20代の女性からは、こんな意見も出ている。
 「毎年、クリスマスは同僚たちと仕事が終わったら、流れで飲みに行くのが定番だったのですが、今年は休日なのでそれもなさそうです。平日だったからこそ、恋人がいない男女で集まってワイワイ騒ぐというノリが自然にできたのだと思います。会社にいない休日に『今日クリスマスだけど、予定ないから一緒に飲まない?』と誘うのはハードルが高いですよね」
なかには、「暗いニュースが多かった今年だからこそ、クリスマスくらいたくさんの友達と騒いで楽しみたい」(20代)という女性もいるが、筆者が聞き取り調査をした範囲では、「今年は特に恋人のいないクリスマスは寂しい」と感じている女性が多いようだ。

今年のプレゼントは「モノ」より「コト」
告白・プロポーズも成功率がアップ?

さらに、公表されている調査結果を見ていくと、やはり2011年のクリスマスは「絆」がテーマになっていることがわかる。
アフラックの調査では、恋人からのクリスマスプレゼントは「モノ」より「コト」が欲しいと思っている男女は60.4%にも及ぶという。高価なプレゼントをもらうより、「絆」が深まるような思い出が欲しいということだろうか。
震災以降、確かに我々は「絆」の大切さを知った。しかしながら、過剰に「絆」を求める風潮に「同調圧力」を感じる人も多い。恋人がいない男女にとっては「極寒」のクリスマスとなってしまいそうだ。
● ロス婚の福音
泣いても笑っても、激動の2011年もそろそろ終わり。いまだ復興が進まず不安を抱える被災者の思いを想像してみると、クリスマスに恋人がいないことくらい、我慢しなければいけないのかもしれない。しかし、恋人がいない当事者たちにとっては、深刻な問題である。

復興需要を盛り上げる今年のクリスマス
寂しいシングルたちもポジティブ思考で!

一方、当然ながら、今年のクリスマスはポジティブな側面も大きい。「クリスマス三連休」を受け、宿泊業界は好調で、満室となっているホテルも多いという。
震災の発生によって「自粛ムード」が広がり、夏には一部の花火大会が中止になった2011年だが、復興のためにも日本経済を活性化しなければならないことは、昨今の増税議論を見ても明らか。そんな大震災の年に偶然訪れた「クリスマス三連休」は、日本経済の浮揚を促す「天の恵み」と言うことができよう。
さらに、前出のアフラック調査によると、クリスマスシーズンに告白やプロポーズした人の74.2%が成功しているというデータもある。綿密な計画を立てることができる「クリスマス三連休」は、告白やプロポーズに打ってつけ。「出費がかさむ」という悲鳴も聞こえてきそうだが、恋人がいない人は思い切って告白するクリスマスにしてみてはどうか。
もちろん、1人で過ごすのもいい。ごみごみした街に繰り出すより、温かい部屋でビールでも飲みながらテレビを観ているのも、案外いいものだ。「絆」を大切にするなら、1人暮らしの人は久しぶりに実家に帰ってみるのもいいだろう。もしくは「三連休も仕事」という働き者もいるかもしれないが、それも一興である。
筆者の経験上、皆が遊んでいるときに働くと、何故だか気分が妙にハイになり、いつもより作業がはかどるものだ(個人差はあると思うが)。
いずれにしても、「同調圧力」に屈することなく、なるべく寂しくないクリスマスを迎えたいものである。



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