@福島・いわき
- 2011/12/2 12:00
11月22日、福島県いわき市の小名浜港を訪ねた。震災で津波に襲われ、港周辺にある鮮魚店や水産加工会社の大半は今も復旧していない。
閑散とした港を歩いていると、シャッターを下ろしたままの水産会社が目に留まった。柱に据えられた看板には、大きな文字でこう書かれていた。「心まで汚染されてたまるか」
私は建物の前に立ち尽くしてしまった。先行きの不透明さにめげそうになる気持ちを、必死で奮い立たせようとしている従業員らの悲痛な叫びが伝わってきた。
岩手や宮城の沿岸部も、この小名浜と同じように、大津波で漁港の機能が失われた。ただ、小名浜が両県の港と異なるのは、鮮魚店などが地元産の魚を扱える見通しが立っていないことだ。福島第1原発の事故から約9カ月。今でも一部の魚の放射性セシウムが暫定規制値を超えている。
水産会社の近くに、数少ない営業中の店舗を見つけた。津波被害を受けながらも、9月に水産品の販売を再開した鮮魚店「丸克商店」。店内にはサンマやホタテなど新鮮な魚介類がならぶが、どれも北海道や岩手など各地から仕入れたものだ。
専務の三浦宏一さんは「どこで捕れても魚は魚」と突き放したように言う。一方で、「あと5、6年で地元の物を売れるようになればいいけれど」と、期待ものぞかせる。
早急に地元水産業の今後のあり方を考えなければ、小名浜港の人たちの心は本当に折れてしまう。太陽の光できらきら輝く海を見ながら、復興の道筋が見えていない地元沿岸漁業に強い危機感を持った。(相模真記)
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