Monday, October 17, 2011

17/10 慰安婦基金構想 日韓関係を“後退”させないか(10月17日付・読売社説)

なぜ、元慰安婦のための基金構想などを改めて持ち出したのか。首をかしげざるを得ない。

民主党の前原政調会長が、ソウルで韓国の金星煥外交通商相と会談し、いわゆる従軍慰安婦問題について新たに人道的観点から議論していきたいとの考えを示した。

村山政権時代に発足した「女性のためのアジア平和国民基金」(アジア女性基金)などを参考にして、対応を検討したいとも、会談後の記者会見で述べている。

慰安婦問題は今回、韓国側から改めて提起されたものだった。


8月末、韓国の憲法裁判所は、元慰安婦の賠償請求権について韓国政府が解決に向けた十分な努力をしていないのは、権利侵害に当たるとの判断を示していた。

これを受け、韓国政府は協議を日本政府に申し入れた。先日開かれた国連総会の委員会でも、韓国政府の代表は慰安婦問題を14年ぶりに取り上げ、「戦争犯罪」などにあたる可能性があると批判し、賠償請求権があると主張した。

しかし、国交正常化の際の協定で、請求権問題は完全かつ最終的に解決されたとして、賠償はすべて終わったとする国家間の約束が日韓間には存在する。

前原氏も会談で、そうした政府の立場を伝えた。その上で人道的措置に言及したのは、賠償とは別の形で韓国側に配慮を示す必要があると考えたのだろう。

しかし、そのような「配慮」は、日韓関係を進展させることにはつながらない。

そもそも、アジア女性基金の創設にあたっては、歴史的事実の冷静な検証が欠けていた。

1993年の河野官房長官談話には、日本の官憲が組織的、強制的に女性を慰安婦にしたかのような記述があり、誤解を広めた。だが、こうした事実を裏付ける資料は存在しなかったのである。

河野談話を“根拠”に設立されたのがアジア女性基金だった。

しかし、韓国政府は賠償とは区別された形の「償い金」の支給に反発した。多くの韓国人元慰安婦も受け取りを拒否し、韓国での事業は挫折した。

民間から集めた約6億円の資金は主にフィリピンや台湾の元慰安婦に支給され、2007年に基金は解散した。

ソウルの日本大使館前で毎週抗議集会を開いている韓国の民間団体は、大使館前になお慰安婦の碑を設置しようと計画している。

こうした韓国に、歴史を正しく踏まえた対応が必要だ。

(2011年10月17日01時30分 読売新聞)

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