Monday, October 17, 2011

13/10 辛亥革命100年 「民主化いまだ成らず」の中国(10月13日付・読売社説)

孫文らが主導し、清朝を打倒した辛亥革命から100年を迎えた。

中国の胡錦濤国家主席は、革命100周年記念大会で演説し、共産党を革命の「最も忠実な継承者」と位置づけた。国民党との内戦を制し新中国を建国した共産党の正統性を訴える狙いがあるのだろう。

その上で胡主席は「中華民族の偉大な復興を実現するため共に努力しよう」と、台湾に統一を呼びかけた。中台を一つに結ぶ「中華民族」を前面に掲げることで統一機運を盛り上げる思惑がある。

孫文は「三民(民族、民権、民生)主義」を掲げた。その一つである「民権主義」では、選挙権などの政治的権利を国民に保障し、議会制民主主義を定着させ、行政、立法、司法などの権力分立を確立することを目指していた。


しかし、100年たってなお、この「民権主義」の理想の実現にほど遠いのが中国の実情だ。

たとえば、一党独裁廃止などを求めたことが罪に問われて服役中の民主活動家、劉暁波氏は、ノーベル平和賞の受賞から約1年後の今も、処遇は改善されないでいる。妻ですら事実上の自宅軟禁状態に置かれているのは問題だ。

共産党政権が革命の継承者を自任するのなら、もっと民主化や政治改革に踏み出す必要がある。

孫文が経済的な不平等の改善を目指した「民生主義」でも、共産党政権は高成長の裏で、富の格差という新たな不均衡を招いた。

汚職や不公正に反発して各地で多発する民衆暴動は、社会のひずみの表れにほかならない。高速鉄道や地下鉄などの大型事故が相次いでいるのも、経済成長優先で安全性を軽視したことが原因だ。

新中国建国の原動力となった「民族主義」は、共産党政権の愛国主義教育によって過激な反日行動を生んだ。その動向を日本は引き続き注視する必要がある。民族主義の過熱は軍拡と相まって周辺国に脅威を与えている。

一方、台湾では、国民党の馬英九総統が、「中華民国建国100年」の式典で、「孫文が理想とした、自由で民主的で国民が等しく富める国家の建設は、台湾で完全に実現された」と演説した。

中国側の統一の呼びかけに対しては、逆に、民主化を中国に促した。三民主義を実践したとの強い自負があるからだろう。

多くの日本人がかかわって支援した辛亥革命は、日本と中国、台湾を結ぶ絆でもある。その歴史的経緯を抜きに、今日の日中、日台関係を考えることはできない。

(2011年10月13日01時11分 読売新聞)

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