Tuesday, September 27, 2011

27/09 春秋



2011/9/27付
 時代はちょうど日本の幕末。池上永一さんの小説「テンペスト」は、滅亡へと至る琉球王国の末期を、壮大なロマンを織り交ぜて描いた大作だ。仲間由紀恵さんが主演し、NHKのBS時代劇でも放映された。ご存じの人も多いだろう。
▼主人公は頭脳明敏な美少女の真鶴。男装して名を孫寧温と改め、王府入りして、次々と難題を解決していく。奇想天外な物語だ。かのペリーの琉球来航も、巧みな外交術で上手にあしらってしまう。寧温が実在してくれたら……。読み進めていくと思わず、いまの沖縄の米軍普天間基地の移設問題と重ねてしまう。
▼「結果を出す時期」。先の日米首脳会談で、米国が普天間問題の進展を促した。現実はどうか。辺野古移設の日米合意は風前のともしび。地元の安全を考えれば、周囲に住宅が密集する普天間の固定化も避けたい。一方で、日米同盟の重みも無視できない。首相は沖縄説得に全力を挙げるというが、解はあるのか。
▼「どうか琉球を愛し続けてください」「日本に併合されたことを五十年後、百年後の民が心から喜べるように琉球を愛すると約束します」。かの「テンペスト」の終章。真鶴と、互いに恋する日本の内務官僚の間にこんな会話がある。沖縄出身の池上さん、いや沖縄の人々の悲痛な願いのようにも、聞こえてくる。

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