イタリアの高級車フェラーリは米国が一番の輸出先。2位はドイツだったが、中国がその座を奪った。中国人の所有者は平均年齢35歳で、他国より10歳若いという。高度成長が生み出した富豪たちの2世、「富二代(ふにだい)」と呼ばれる若者だ▲長江中流の都会、武漢でナンバープレートのない「フェラーリ458イタリア」に乗った暴走族が捕まった。中国内で買うと388万元(約4700万円)もするスポーツカーだ。交通検問を突破してパトカーに追われ逃げ切れずに止まった▲パトカーが前に回り込む。警官が取り囲む。運転席の若者はドアをロックして立てこもった。見物人が遠巻きにして携帯電話でブログに情報を流す。若者は窓ガラスを下げて免許証のかわりに携帯を突きだした▲若者の親が有力者で、その圧力を受けた警官の上司が電話してきたのだ。衆人環視のなかで警官は迷ったろう。携帯に出て事件をもみ消せばネットで自分が袋だたき。出なければ、メンツをつぶされた上司の恨みをかう▲警官は富二代の暴走族を警察署に連行していった。「勇気ある警官だ」とネット世論はたたえた。だが、冷めた意見もある。警察署には例の上司が待ちかまえているから、若者は裏口から出て行ったのではないか▲中国には、ナンバーのない高級車を乗り回せるような、法の支配を受け付けない階級が存在する。こんな特権階級の2世のことを、政治の世界では「太子党」という。太子党と経済界の富二代とは双子の兄弟だろう。高級車を乗り回して育った特権2世たちが世界第2位の経済大国を運営する時代が来るのは、そう遠いことではない。
毎日新聞 2011年9月26日 0時06分
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